不動産売買時の火災保険について

更新日2020-07-11 (土) 23:37:09 公開日2019年1月25日

火災保険には、災害時に保険の対象に対して支払われる「損害保険金」と、その災害に係る諸経費として支払われる「費用保険金」があります。

保険

費用保険金

「損害保険金」は火災などの災害時に、建物や家財などの保険対象に支払われる保険金。「費用保険金」は災害後に必ず必要となる後片付けや、住宅に住むことができなくなった場合の宿泊費用などの諸費用のことで、災害に際して想定される様々な費用に対応しています。

ただ費用保険金については、各保険会社の補償プランによって名称も「諸費用」という場合もありますし、「損害保険金」に自動付帯している場合、オプションの場合もあります。また、支払われる保険金についても支払回数や限度額が設定されていることが多く、一概に説明はできませんが、確実に言えることは実際に災害にあった場合、必ず発生する費用であるということ、また費用保険金が付帯していることによって、契約時に設定した保険金額を上回って補償を受けられる場合もあります。

地震火災費用保険金

地震、噴火またはこれらによる津波を原因とする火災によって、保険の対象である建物が半焼以上、または保険の対象である家財が全焼した場合に、300万円を限度に保険金額の5%が支払われます。例えば1,000万円の火災保険に加入している場合だと50万円の「地震火災費用保険金」を受け取ることが出来ます。(オプションにより支払割合を引き上げて契約することもできます)
尚、地震・噴火またはこれらによる津波を原因としない火災、もしくは地震・噴火またはこれらによる津波による火災以外の損害、さらに保険の対象である建物が半焼に及ばず、または保険の対象である家財が全焼に及ばないと判断された場合は補償対象外となりますので、決して地震保険の代わりになるものではないことを覚えておいてください。(地震保険に加入していない場合のせめてもの救済措置とも言われています。)

残存物取片づけ費用保険金

損害保険金が支払われる場合に、損害を受けた保険の対象である建物や家財の残存物(燃え残り・がれきなど)の片づけにかかる保険金です。多くの場合損害保険金の10%を限度とした実費で支払われますので、保険金額1,000万円の火災保険だと最大100万円の支払いとなります。

臨時費用保険金

損害を受けた補償対象の建物や家財の損害保険金とは別に支払われる費用で、損害保険金の10~30%、300万円程度を限度に支払われますので、保険金額1,000万円の火災保険だと100~300万円の「臨時費用保険金」を受け取ることが出来ます。なお、この費用は災害後に住宅に住めなくなった場合の宿泊費、仮住まいの費用、再建中の家財の保管費用などが想定され、使い道は限定されていません。多くの場合、保険契約時に支払割合や限度額を選択することができます。

損害防止費用

火災・落雷・破裂または爆発による損害の発生または拡大の防止のために支出した、必要または有益な費用で、保険金額を限度に実費で支払われます。
例えば、消火活動の為に使った消火剤を再度取得する費用、消火活動に使用して損壊した物の修理費用や再取得費用、消火活動の為に緊急に投入された人員または器材に係る費用の補償です。

水道管修理費用保険金

保険の対象に建物が含まれる場合に、専用水道管が凍結によって損傷し、これを修理する場合の実費費用が補償されます。

傷害費用保険金

火災その他特定の災害で被保険者や親族などが死亡したり傷害を負った時に、保険金額の一定の範囲で補償される保険金です。
一名に付1,000万円を限度として、死亡・後遺障害で保険金額の30%程度、重症の場合で保険金額の2%程度の保険金を受け取ることが出来ます。保険金額1,000万円の火災保険だと、死亡・後遺障害で300万円、重症で20万円程度となります。

失火見舞い保険金

火災_s

保険の対象である建物や家財から火災・破裂・爆発が発生し、それにより第三者の所有物に損害が生じた場合、支出した見舞金などの費用が支払われます。(被災1世帯あたり30万円程度を限度とし、1回の事故につき損害保険金の30%程度を限度とします。したがって保険金額1,000万円の火災保険だと、1回の事故につき300万円の「失火見舞い保険金」が支払われる場合があります。)

さて、ここで疑問に思われる方もいるかと思います。
自分が火を出しておいて近隣に迷惑をかけたのに「見舞金」程度で済むのか・・・?

そう、確かに民法では
民法第709条:「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
とあります。
つまり、「わざとであろうとなかろうと他人に損害を与えたら、賠償する責任がある」ということです。

しかし、こと火災に関してはこのような規定が存在します。
「民法第709条の規定は失火の場合に之を適用せず。但し失火者に重大なる過失あるときは此の限りに在らず。」

これは日本の家屋は木造建築が多く、失火者に過大な責任を課すことになることから制定されたと言われ、「重大な過失」がある場合を除き損害賠償責任を負うことはありません。とはいえ近隣に迷惑をかけた場合の謝罪の気持ちをサポートできる「失火見舞い保険金」という補償があります。

ただし、注意が必要なのは賃貸住宅における損害賠償責任です。
借り物の部屋を失火により損傷させてしまった場合は、貸主(大家さん)に対して原状回復して返還しなくてはならないという責任は免れることはできませんので、通常は賃貸契約の際に「借家賠償」という補償の付いた火災保険に加入する必要があります。

これまで説明してきた「費用保険金」ですが、いずれも保険会社または保険プランによって付帯されている補償は異なりますし、必要に応じて選択することが出来る補償もあります。また、火災保険は長期の契約を結んでいることも多く、何年も前の保険と現在の保険の内容が大きく異なっていることも考えられます。何年も前の契約だとそもそも契約内容の記憶も薄れているでしょう。
というわけで、保険金の請求漏れも多く発生することになります。
保険の請求権は3年です。せっかく保険料を支払って契約している保険です。一度振り返って火災に限らず思い当たる事故がある場合は、保険会社や保険代理店に問い合わせてみましょう。

今回の「費用保険金」について、様々な場合に受け取ることが出来ると説明してきましたが、保険金を受け取ることが出来ない場合も一部説明しておきましょう。パンフレット等に書かれていますが、大半の方は読んだことがないかも。また、保険会社によって若干内容が違っている場合もあるので、詳細については保険会社にお問い合わせください。

・故意、重大な過失または法令違反によって生じた損害
・保険の対象である家財の置忘れ・紛失による損害、保険証券記載の建物外にある間に生じた事故による損害
・運送事業等に託されている間に生じた損害
・火災等の事故の際の盗難による損害
・戦争・内乱その他これらに類似の事変または暴動による損害
・地震・噴火又はこれらによる津波を原因とする損害(地震保険で補償されます)
・核燃料物質に起因する事故による損害
・保険の対象の欠陥によって生じた損害
・保険の対象の自然の消耗・劣化、性質による様々な劣化
・ネズミ食い、虫食い
・保険の対象の平常の使用・管理に於いて通常生じ得る損傷・汚損であって、機能の損失や低下を伴わないもの

そのほかにも、破損・汚損の保険金が支払われない特定の品物もあります。
・義歯・義肢・コンタクトレンズ・眼鏡など
・携帯電話類
・ノートパソコン類(ということは、デスクトップパソコンは補償対象でしょう)
・電球・ブラウン管等の管球類(家電製品は補償対象になります)
・動物・植物

さらっと書き出しただけでも結構意外なものが補償対象外となっていて、ますます複雑な火災保険ですので、気になることがあれば気軽に問い合わせて良いと思います。

あわせて読まれている関連記事

あなたの役に立ったらシェア!