Top / z9

相続した不動産を売却した時にかかる税金

更新日2020-07-11 (土) 22:11:31 公開日2018年11月5日

ここでは、皆さんからの質問が多い、相続した不動産を売却した時の税金について解説します。
まず、事例にそってご説明しましょう。

★目 次★


相続した不動産を売却した時にかかる税金

Aさん(お父さん)が既にお亡くなりになっている。
Bさん(お母さん)が今回お亡くなりになりました。
Bさんは、東京に不動産を持っていらっしゃって、そこに住んでいらっしゃいました。

今回、Bさんが住んでいた不動産を相続されるのが、Cさん(長女)Dさん(次女)です。
お二人とも結婚されていて、Cさんは埼玉に住んでいらして、Dさんは千葉に住んでいらっしゃいます。
CさんとDさんは、他のところに住んでいらっしゃるため、あえてBさんが住んでいらっしゃった東京の自宅を相続したとしても、今後、住むことがないため売却することになりました。
このようなケースが、非常に多くあります。

売却することは、遺産として平等に分けやすくなるなどのメリットがあります。
ただし、注意しなければならないのは、売却した際にかかる税金や諸経費です。
かかってくる税金は、印紙税・所得税・復興特別所得税・住民税等があります。
諸経費は、不動産仲介業者への仲介手数料・建物を壊し更地にする場合は、取り壊し費用などが該当します。

今回は、この相続した不動産を売却した時に、どのくらいの税金がかかるのかというお話をします。
お話する前提として、相続ではなく、一般的な不動産の売買をした時に、どのような税金がどのくらいかかるのかということを理解しなければ、この事例の理解もわかりにくいと思いますので、まずは、一般的な不動産売買の税金についてお話をさせていただきます。

これから説明する内容は、厳密にいうと細かい点がたくさんあります。
細かいところまで説明すると複雑になってきますので、わかりやすくするために、ここではあえて簡単にご説明しています。

一般的な不動産売買の場合、何に税金がかかるのか (税金のしくみ)

税金がかかるケース、かからないケースとは

当初1000万円で不動産を購入した(購入代金)場合の事例です。

■税金がかかるケース
1000万円で買った(購入代金)不動産が、1200万円で売れた(売却代金)場合、200万円の利益がでます。
簡単に言えば、その200万円に税金がかかってくるということになります。

■税金がかからないケース
1000万円で買った(購入代金)不動産が、800万円でしか売れなかった(売却金代金)場合、利益がでていないため、このケースであれば税金はかかりません。

これが税金の仕組みです。

一般的な不動産売買の場合、税金はどのくらいかかるのか

一般的な不動産売買の場合、税金はどのくらいかかる?

【譲渡価格】
不動産を売却した時の金額
【取得費】
当初不動産を購入した時の代金・諸費用(不動産購入時にかかった仲介手数料・印紙代など)
【譲渡費用】
譲渡された不動産を売却する時にかかった諸費用(仲介手数料・印紙代・測量費など)
今回の例では省略しています。
【特別控除額】
3000万円特別控除など
3000万円特別控除を簡単に説明すると、不動産を購入した金額より高く売れた場合、3000万円までの利益については税金がかからないという特例です。
今回の例では省略しています。
【譲渡所得金額】
この金額に税率をかけて譲渡所得税を計算します。

購入代金が1000万円で、売却代金が1200万円というケースの場合、取得費として仮に80万円かかったという前提で計算すると、売却代金1200万円から、購入代金と諸費用合計の1080万円を引いた金額の120万円が譲渡所得金額になります。

譲渡所得金額120万円に対し税率をかけます。
税率は不動産の保有期間により、「長期譲渡所得」になるか「短期譲渡取得」になるかが分けられ、それにより税率も異なってきます。

「長期譲渡取得」とは
土地や建物を売った年の1月1日現在で、その土地や建物の所有期間が5年を超える場合
「短期譲渡取得」とは
土地や建物を売った年の1月1日現在で、その土地や建物の所有期間が5年以下の場合

「長期譲渡所得」の税率(所有期間5年超)の場合:所得税15%+住民税5%=20%
「短期譲渡取得」の税率(所有期間5年以下)の場合:取得税30%+住民税9%=39%

この他、復興特別税も増税がありますが、ここでは省略しています。

復興特別税とは
東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法
に基づいて、東日本大震災からの復興施策に必要な財源を確保するために課されることとなった日
本の税金。
本来の所得税額に2.1%の税率を乗じた金額を復興特別所得税として平成25年1月1日
から平成49年12月31日までの25年間導入することが定められています。


今回の例では、「長期譲渡所得」(所有期間5年超)で計算していますので、譲渡取得金額120万円に20%をかけて税金(譲渡所得税)は、おおよそ24万円となります。
これが一般的な不動産売買のケースです。

相続した不動産を売却した時の税金(購入価格がわかる場合)

一般的な不動産売買のご説明をしてきましたが、ここからは、今回のテーマの、相続した不動産を売却した時の税金についてのお話になります。

相続登記(法務局の登記簿を変更する手続き)

Aさん、またはBさんの名義のままでは不動産を売却することはできません。
相続登記(法務局の登記簿を変更する手続き)が必要になります。

相続登記とは不動産の所有者であるAさんまたはBさんが亡くなったため、その不動産の登記名義を被相続人(亡くなった方)から相続人へ名義の変更を行うことをいいます。

また相続した不動産を売却するためには、相続人への所有権移転登記も必要になります。

それらの手続きを経て、その不動産の名義は、CさんとDさんに変更されます。

購入代金は、通常であれば原則、Aさんが買った時の金額をBさんが引き継ぎます。
Aさんが当初不動産を買った金額が1000万円ということがわかっている場合は、先ほどの例とおなじように、Eさんに1200万円で売却し、200万円が利益となり、それに対して税金がかかるというパターンになります。

相続した不動産を売却した時の税金(購入価格がわからない場合)

ここで問題になってくるのが、AさんまたはBさんが、不動産を買った時の金額がわからないというケースです。
先祖代々の土地や建物などもあり、このケースは非常に多く発生しています。
普通の売買であれば、購入当時の代金はわかっていますが、Aさんの購入代金がわからなかった場合は、CさんとDさんが、Eさんに売却をする時に、Aさんが、買った金額を算定する必要があります。
その算定方法についてご説明します。

不動産相続に関わる税金

■取得費がわからないとき、税金の計算はどうなるのか
簡単に説明します。
CさんとDさんが、Eさんに1200万円で売却した。
AさんまたはBさんが不動産を買った時の金額が分からない。

譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。取得費は、土地の場合、買い入れたときの購入代金や購入手数料などの合計額です。
建物の場合は、購入代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いた額です。
しかし、売った土地建物が先祖伝来のものであるとか、買い入れた時期が古いなどのため取得費がわからない場合には、取得費の額を売った金額の5%相当額とすることができます。

たとえば、1200万円で売却した場合、1200万円×5%の60万円が購入代金とみなされ、1200万円から60万円を引いた1140万円が所得(利益)となります。
もちろん、いろいろな諸費用を差し引くことはできますが、そこは今回省略しています。
1140万円の所得に対して20%(保有期間が5年を超える場合)となりますので、228万円の税金がかかってしまうということになります。

これが相続した不動産で、購入した金額がわからないケースです。

注意!不動産相続に関わる税金のしくみは、とても複雑です

一般的な不動産売買と比べると、相続した不動産は購入時の価格が分からないケースも多くあります。購入価格がわかる場合と、わからない場合では、かかってくる税金に大きな差がでます。

譲渡所得が発生(利益が出た場合)し、多額の税金を払うことになると、不動産を売却した翌年3月15日までに確定申告を行い、所得税を納める必要があります。
また、住民税は確定申告後に届く納付書で納めることになります。

多額な税金を払うことにならないよう、購入当時の売買契約書など、購入価格がわかるような契約書や資料は必ず残しておくことが大切です。

それらが無くなってしまった場合、当時の相場を見て購入金額をだすなど、いろいろ方法はあるにしても、実際には、なかなか難しい問題です。

相続した不動産を売却する際は、税金関係やさまざまな手続き等もあり、とても複雑です。
売却するタイミング、必要となる書類作成など、それぞれ専門の不動産会社や司法書士さんなどに相談されることをおすすめします。

あわせて読まれている関連記事

関連記事案内

あなたの役に立ったらシェア!