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海外居住中、海外滞在中、海外赴任中の不動産売却時の必要書類とその取得方法

更新日2020-07-12 (日) 00:01:16 公開日2019年4月17日

必要書類

最近、海外転勤等により海外に居住したまま、日本国内の不動産(マンション・一戸建て)を売却するというケースが多くなっています。

海外在住中や海外赴任中であっても、日本に所有する不動産売却は可能です。
しかし、特に「購入者が見つかる~売買契約~物件の引渡し」このプロセスに進んでからは、売主となる方が、日本国内にいる時に比べると、少し手続きが煩雑になってきます。

ここでは海外居住中、海外滞在中、海外赴任中の状態で、日本国内にある自宅(マンション・一戸建て)を売却する方法と必要となる書類、その取得方法についてご案内します。

★目 次★【海外在住、居住中、滞在、赴任時の不動産売却と必要書類】


まず、売主が日本国『非居住者』かどうかにより売却手法が変わります!

海外在住者でも、すでに『非居住者』になっているかどうかで不動産売却方法は変わります!
ゆえにまずは日本国内の『非居住者』かどうかの区分について知って頂きます。

『非居住者』とは⁉

「非居住者」とは、その定義が国税庁HPに記載されており「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。
具体的には、日本国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人を「居住者」と言い、それ以外の個人を「非居住者」と規定しています。
言い換えれば日本国内に住所がなく、かつ、現在まで引き続いて1年以上日本国内に居所がない人のことを「非居住者」と言い、海外在住が1年未満の場合は長期の用事で日本を離れている人という扱いをうけ、日本国内のルールが適用されるという事になります。

この規定から海外に1年以上長期転勤中や滞在中などの日本人も「非居住者」に該当し、日本国籍でありながら、外国のルールに則って生活しているとみなされます。

また日本に住んで1年以上の外国人は「居住者」として扱われますが、雇用契約等で日本での滞在期間が1年未満であることが明らかなときは、「非居住者」として扱われる可能性があります。

更に日本国内に主たる事務所や本店がない「外国法人」も同様にこの規制の対象になります。

もし海外在留期間が1年未満の人、また、まだ日本国の住民票に登録されている人が海外滞在されている場合は、一般的な売却の流れと売却時必要書類で対応可能となります。

売主(所有者本人)の売買契約時及び決済時の出席可否について

不動産売却の進め方や必要書類については、売主が売買契約締結時及び決済時に出席できるかどうかで変わってきます。

帰国して出席出来る場合は、代理人を立てる必要はありませんが、帰国できない(出席できない)場合は、日本国内におられる(親戚、知人、友人)など信頼できる人を代理人に立てて、売買契約締結の権限を委任する必要があります。
代理人には、海外に居住する売主に代わり、売買契約の締結や代金の受領、物件の引渡しなど、不動産売買に責任を持たせることになります。

売主が売買契約と決済に出席可能な場合

売主が出席される場合、準備するものとして次のものがあります。

・売買契約時:不動産権利証(登記識別情報通知)
・印鑑証明書と実印

ところが、海外移住届を提出されている場合は、印鑑証明書が無くなりますので、自動的に実印の証明が出来ないことになります。
また、所在を確認する住民票も無くなってしまいます。

よって、それに代わるものを準備する必要があります。

・実印→サインで問題ありません。
・印鑑証明書の代用→サイン証明書
・住民票の代用→在留証明書

売主が売買に出席不可能な場合(代理人選任)

売主が売買契約や売買後決済に出席出来ない場合、所有者本人と代理人が準備するものとして次のものがあります。

・所有者本人のサイン証明書と在留証明書
・所有者本人から代理人に対する代理権限委任状
・代理人の印鑑証明書と実印
・代理人の本人証明書類(パスポート、免許証、健康保険証など)

これらの書類がなければ、売買決済時に立ち会う司法書士の先生は、売買必要書類の確認、登記手続き(所有権移転登記)が出来ません。

また、これを基に司法書士が適切な手段で売買契約での本人意思確認をすることになりますので、この3点は必ず必要なものになります。
所有権の移転登記や、住宅ローンなどを全額返済するときに行う抵当権の抹消登記を、司法書士に依頼する際にも司法書士に任せるという『代理権限委任状』が必要となります。

必要な書類はどのようなものが有るか

海外在住中に日本に在る不動産を売る場合、日本にいるときと違う書類を取りつける必要があります。

サイン証明書

サイン証明書は、居住先(滞在地)の最寄の日本国大使館や日本国領事館で手続きをすれば簡単に取得することが出来ます。

在留証明書

サイン証明書と同じく、居住先(滞在地)の最寄の日本国大使館や日本国領事館で手続きをすれば簡単に取得することが出来ます。

代理人に対する代理権限委任状

代理権限委任状は、インターネットでもひな形を取得することが出来ます。
しかし、間違いがあってはいけないため、該当物件売買のためだけのものとして、司法書士の先生が作成したものを使用することをおすすめします。
あらかじめ司法書士の先生にに書面を作成していただき、郵送して大使館等に持ち込むことになります。
また、売買決済時には、司法書士の先生による意思確認も行なわれますので、その打ち合わせも必要です。
司法書士の先生はどこに依頼したら良いか分からない場合は、売却を依頼する不動産業者に相談することでスムーズに手配することが可能です。

各必要書面の手配と取得方法について

ここからは、これらの書類を取得する方法及び注意点についてご案内します。

サイン証明書

サイン

サイン証明書とは、本人の署名、及び ぼ印であることを証明するもので、海外在住の所有者が日本国内の不動産登記手続や相続手続等の際に、印鑑証明書に代わるものとして必要になるものです。

サイン証明書の取得方法

売主が、赴任地の最寄の日本国大使館や日本国領事館に出向き、係官の面前で、売主ご本人が代理権限委任状にサインします。
日本国大使館・日本国領事館は、そのサインが間違いなく、売主ご本人のものであることを証明する書類(サイン証明書)を発行してくれます。
なお、サイン証明書には「貼付形式のもの」と「単独形式のもの」の2種類があります。

不動産業者へ売却依頼をされる時は「単独形式のもの」を提出すれば良いのですが、実際に売買契約決済時には「貼付形式のもの」を準備していただくことになります。

貼付形式のサイン証明書

代理権限委任状に署名及び ぼ印を押し、関係書類と認証文と綴り合わせて割印された書面が『貼付形式のサイン証明書』となり必ず売買決済に必要になります。

単体形式のサイン証明書

この他に、「サイン証明書」のみの交付も受けられます(これを単体形式といいます)。
こちらは、関係書類、たとえば委任状と署名証明書が別紙に分かれているもので、所有権移転登記に必要な署名証明書としては原則として不適格なので注意が必要です。

ただし、法務局(登記所)によっては、これでも受理してくれるところもありますので、署名証明書を求められたときは、関係書類との割印形式のもの(貼付形式のもの)か、単なる署名証明書(単独形式のもの)でさしつかえないかをよく確かめる必要があります。

売却する物件の管轄法務局により対応サイン証明書が違いますので、必ず事前に不動産業者に確認してください。

大使館(領事館)へ行くときの必要書類

1.日本国発行の有効な旅券(パスポート)(日本国籍を有していること及び本人確認ができる書類)
2.署名すべき関係書類 (事前に署名しないで持参する)
サイン証明は「領事の面前で本人がサインしたこと」を確認・証明するための書類なため、書類には事前にサインをせずに持参します。また、郵送や代理人の申請はできません。
3.手数料(1通につき現地通貨で1,700円相当)
※サイン証明書に加え、印鑑証明書も取り扱っている中華人民共和国などの日本国の領事館もあります。

在留証明書

在留証明書見本

在留証明書とは、日本国外に居住(在留)する日本人が、外国のどこに住所を有しているかを証明するものです。
日本国内の不動産登記手続などの際に、住民票その他の住所証明書に代わるものとして必要になります。

登記簿上の住所と現住所が相違する場合

あらかじめ住所変更の登記も合わせて行う必要があります。
しかし在留証明書には「前住所」の記載がありません。
この場合、登記簿上の住所地から海外住所へ「移転したこと」を証するために、日本での最後の住所地での「除住民票」や「戸籍の附票」等を取得することになります。
ただし、つながりが不十分であるならば、さらに「上申書」を作成するなどの措置も必要になる場合もあります。

在席証明書の交付

在留証明書交付は、最寄りの管轄の現地日本国大使館や日本国領事館に、旅券・運転免許証、光熱費の請求書など、住所を立証できるものを提示して申請する必要があります。

この証明書は日本人である申請人が申請時現在、その外国のどこに生活の本拠となる住所を有しているかを証明したものです。
当然、申請者は申請時現在でも日本国籍がある者に限られます。

また、既に3か月以上滞在し、在留する国あるいは在留地の官公署発行の公文書などで住所が明らかなことが必要です。
当然在留届が提出されていなければなりません。

外国に住所又は居所を定めて3か月以上滞在する日本人は、「在留届」を提出することが法律(旅券法第16条)で義務付けられていますので、必ずその地域所轄の大使館・総領事館に速やかに「在留届」を提出しましょう。
在留届は、大使館に直接提出するほか、「在留届電子届出システム(ORRnet) 」こちらから申請することが可能です。

尚、在留届を提出することで、自然災害やテロなどの緊急事態発生時には、この提出された「在留届」をもとに、大使館・総領事館の、安否確認・支援活動等を受けることができるようになります。

住所の変更証明書として、現住所の証明に加え、以前の住所についても証明が必要なときは、以前の住所を立証できるものを提示します。

過去の住所に関しては、現在の住所の直前のもの2か所まで証明してもらうことができます。
在留地を離れた後では申請をすることはできませんので、帰国、転出の際には、前もって必要部数の在留証明を取得しておきましょう。
この場合申請人本人が直接出頭することが必要になります。

大使館(領事館)へ行くときの必要書類

在留届登録時には事前に以下の情報がわかる物が必要です。

1.旅券(パスポート)
日本国旅券番号が必要になります。※同居家族分も含む

2.戸籍謄本
本籍地記載の為 (過去6か月以内に発行されたもの。提出がない場合は本籍地の記載ができません) 

3.自宅等連絡先(住所、電話・携帯・FAX、メールアドレス)

4.緊急連絡先(住所、電話・FAX・メールアドレス)

5.日本国内連絡先(住所、電話)

6.同居家族連絡先(携帯、メールアドレスなど)

7.現在の住所に何年何月以来居住していることを立証する書類''
 (例 本人名義の電気、水道、ガス、電話料金の請求書、住宅、アパートなどの契約書、消印のある本人宛の郵便など。)

在留証明書取得のために大使館(領事館)へ行くときの必要書類

在留証明書の発行には、業務量や時期によっては、数日かかることもあります。
発行が必要な場合には充分なる日数を考え申請しましょう。
在留証明の発給条件は以下の通りです。

①日本国籍を有していること(二重国籍を有する者を含む)及び本人確認ができる書類(有効な日本のパスポート等)

②住所を確認できる文書(現地の政府機関が発行する滞在許可証、運転免許証、納税証明書、住所の記載がある公共料金の請求書、現地の警察が発行した居住証明など)

③滞在開始時期(期間)を確認できるもの。
滞在期間が3カ月未満の場合は、今後3カ月以上の滞在が見込まれることが確認できるもの(賃貸契約書、公共料金の請求書など)

④証明書の「本籍地」欄に、都道府県名だけではなく番地までの記載を希望する場合は戸籍謄(抄)本

⑤手数料(現地通貨で1200円相当程度)

発給には、証明を必要とする本人が出向いて申請しなくてはなりません。
しかし本人が大使館に出向けない事情がある場合は、代理人による申請も可能です。

この場合には、証明を必要とする者の所定の委任状などが必要となりますので、くれぐれも事前に大使館・領事館へ確認して間違えの無いようにしましょう。

また、住まいが遠隔地だったり、病気やケガなどの事情で大使館まで出向くことが困難な場合は、郵送での申請も可能です。

しかし、受け取りは大使館で行われますので、いずれにしても一度は本人か委任状を受けた代理人が直接出向く必要があります。

在留証明書は、不動産売却のほか、相続の際などにも必要になりますので、外務省によると「重要な用途に使用されるため,在外公館で申請する方の意思と提出先機関の確認を行うと同時に本人の生存確認を行わせて頂いています」とのことです。

参考:外務省「在外公館における証明」

参考:在デトロイト日本国総領事館

代理権限委任状

委任状

先ほどもご案内しましたが、間違いがあってはいけないため、該当物件売買のためだけのものとして、司法書士の先生が作成したものを使用することをおすすめします。
あらかじめ司法書士の先生にに書面を作成していただき、郵送して大使館等に持ち込むことになります。

また、売買決済時には、司法書士の先生による意思確認も行なわれますので、その打ち合わせも必要です。

司法書士の先生はどこに依頼したら良いか分からない場合は、売却を依頼する不動産業者に相談することでスムーズに手配することが可能です。

海外在住時に住まいを売却した場合の税金について

日本に不動産(マンションや戸建て住宅など)をお持ちの非居住者(売主)が、日本国内の不動産を売却して利益が出た場合には、売却時に海外在住(日本に居住していない人)でも所得税が課税されますので確定申告が必要になります。
つまり納税する一定の条件に該当する場合、売買価格の10%(2019年5月1日現在は10.21%)相当額を源泉徴収する義務が生じます。
この場合の納税者は買主になりますので、このことを知らないと後日、突然の税務署からの通知に驚き、冷や汗をかくことになります。
従いまして、この場合において、非居住者(売主)に支払われる金額は、支払金額の89.79%相当額で、残りの源泉徴収した10.21%相当額については、不動産の購入者が対価の支払をした翌月10日までに税務署に前納納付することになります。納付が済みましたら、今度は買主から売主に支払調書を発行します。
これは【非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書】と言うものになり、これを持って売主は確定申告を行い還付を受けることになります。

ただし、不動産の売買金額が1億円以下で、かつ、購入した個人が自己またはその親族の居住の用に供するためのものである場合には、源泉徴収の必要はありません。

海外居住者が確定申告をするには、納税管理人(海外居住者に代わって確定申告書の提出や税金の納付などをする者)を定め、その者の納税地を所轄する税務署長に「所得税の納税管理人の届出書」を提出する手続きが必要になります。
また、海外居住者は電子申告の「e-Tax」が使えません。
そのため、納税管理人が自分で書類「所得税の納税管理人の届出書」を作成して提出しなくてはなりません。
1億円以上の売買の場合の確定申告の手続きは、専門家である税理士に確認することをおすすめします。

もうひとつ注意すべきことが有ります。それは売主の住宅ローン残債が残っているケースでは、この源泉徴収法を知らないと売買決済時の資金計画が狂って困ることになる可能性があるという事です。
コーラルに売却依頼された場合には事前にお知らせしていますから無いことですが、この源泉徴収法を知らない不動産業者が殆どですからくれぐれも要注意すべきでしょう。
国税庁の関係記事がありますのでご参照ください。

☛ 非居住者の不動産売却における支払者の源泉徴収義務(国税庁)

売主が確定申告を行う必要性

売主は不動産を売却した翌年の2月16日~3月15日までの期間で確定申告をすれば、支払い過ぎた所得税がある場合に限り税金還付を受けることができます。
そのため、次のような場合には確定申告が必要であることを覚えておきましょう。

●不動産売却で利益が出た場合(納税義務があります)
●税金還付を受けれることがはっきりしている場合
●「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を利用したい場合

※「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」は「居住用」の不動産に利用できる制度ですが、自分で住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却していれば利用できる可能性があります。

まとめ

海外在住の方でも日本国内における不動産売却は可能です。
但し、売主が日本国内にいる時に比べると、今回ご案内したとおり、手続きが煩雑になります。
必要書類や手続き方法も異なり、手順や注意点について理解していなければ、トラブルが生じる可能性もあります。

もし、海外在住で不動産売却を考えていらっしゃるのであれば、くれぐれも、事前に確認されることをおすすめします。

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