不動産の名義変更をする時の理由(登記原因)と注意点!

更新日2020-07-11 (土) 23:55:04 公開日2019年3月14日

①名義変更理由

不動産(マンション・戸建て・土地)の所有者は、原則として法務局の登記簿で管理されています。
そのため、もし不動産の所有者が変わる場合は、登記簿の名義も変更することになります。
登記簿の名義変更手続きは、法務局で所有権移転登記を申請することが必要になります。

この不動産の名義変更(所有権移転登記)の手続きをする時は、必ず理由(名義変更をすることになった原因)が必要です。

理由のことを登記原因(その登記をするに至った原因)と言います。
所有権移転登記を申請する際は、必ず、登記原因を記入しなければいけません。
仮に空白の状態で申請したとしても受理されることはありません。

ここでは、登記原因にはどのようなことがあるのか、また、登記原因ごとで注意する点についてご案内します。

🌸3つの登記原因(売買・贈与・相続)

②売買贈与相続

不動産の名義変更をするということは、必ず何らかの理由があります。
・親から子へ名義を譲りたい
・個人で不動産を所有しているが法人に名義を変更したい
・法人で所有している不動産を個人に名義を変更したい
・財産分与を原因として離婚したので名義をご主人から奥様に移したい
・時効によって土地を取得した

✿時効とは
長い間続いた事実状態を尊重し、その状態が法律的に正当でなくとも、これを正当な法律状態と認めること。

など、さまざまな理由がありますが、実務上、最も多いのは「売買・贈与・相続」の3つです。

この3つの登記原因について、それぞれの注意点をご案内します。

🌸「売買」の注意点

▶不動産売買による名義変更

不動産売買により、売主から買主へ名義変更となるケースです。

▶不動産の売買価格

価格交渉

たとえば、1千万円の不動産を1千万円で売る場合は特に問題はありません。
1千万円の不動産を900万円で売っても問題はありません。

しかし、1千万円の不動産を400万円で売った場合は、税務署が「みなし贈与」と指摘してくる可能性があります。

✿みなし贈与とは
本来の贈与ではない形で財産などの受け渡しをすることをいいます。

1千万円を400万円で売却するということは半値以下になります。
「実質的には、ただ同然で贈与(あげる)しているようなものだ!」と判断され、たとえ売買(登記)をしたとしても却下されて税務署が贈与税の請求をしてくる可能性もあります。
例えば、身内から超格安で不動産などの財産を手に入れた場合なども該当します。

このようなことにならないように不動産の売買金額には注意が必要です。

▶譲渡所得税

✿譲渡所得税とは
その不動産を買った時の価格よりも高く売れた場合にかかってくる税金を言います。高く売れた場合は「利益」が発生しますので、その利益に対し税金(譲渡益に対しての課税)がかかってきます。
不動産の保有期間が5年以下と5年超えでは税率が異なります。
保有期間5年以下を短期譲渡所得、5年超えを長期譲渡所得と言います。

【S7】⑦短期譲渡所得例

【S7】⑧長期譲渡所得例

ただし、譲渡所得税がかかるのは、売主さんが個人の場合で、売却によって利益がでた場合のみです。
個人で名義を譲り渡す人は、この税金も頭に入れておく必要があります。
また、売主さんが法人の場合で売却によって利益がでた場合は、譲渡所得税ではなく法人税がかかってきます。

🌸「贈与」の注意点

▶贈与による名義変更

不動産をただで贈与(あげる)することにより、現在の所有者から贈与を受けた人へ名義変更となるケースです。

▶税金(贈与税)

①譲渡⇒税金

贈与で気をつけて頂きたいのは、「あげる」と言っても、たとえば、100円程度のお菓子やジュースをあげても贈与税が課税されることはありません。

贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。
1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません。

しかし、不動産のほとんどは価値あるものですので、基礎控除の110万円をはるかに超えてしまします。
そのため贈与税が課税されます。

贈与を受ける人達がご自身の持分で、たとえば10分の1や5分の1ずつにすれば110万円以下になることもありますので、持分移転(所有権移転)をするという例もありますが、中には「贈与税がかかるのであればやめます(いらない)」と言われる方も、けっこういらっしゃいますので、簡単に贈与するというふうに考えてはいけない部分があります。

▶贈与契約の成立

いまお話したように、親が子に「あげる」と言っても、息子は「いらない」というケースがあります

贈与も契約になります
契約というのは、申し込みと承諾のふたつの意思表示がなければ成立しません
たとえ、親がどんなに「あげる」と言っても、子が「いらない」と言えば、贈与契約は成立しないのです。
その場合、当然、登記も出来ません。

🌸「相続」の注意点

▶相続による名義変更

たとえば、夫が亡くなり妻が夫名義の不動産を相続することにより、夫から妻へ名義変更となるケースです。

▶相続税かかかるケース

②相続税

✿相続税とは
相続や遺言で受け継いだ遺産総額が大きい場合にかかる税金をいいます。

◩相続税の計算式

相続税=資産価値-税金免除額×税率

✿資産価値とは
現金と不動産評価額をたしたものです
不動産評価額は、インターネットの一括査定サイトでも確認できます。

◩相続税の改正

平成27年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産にかかわる相続税が改正されました。

「改正前」基礎控除5千万円+(1千万円×法定相続人の数)
「改正後」基礎控除3千万円+(600万円×法定相続人の数)

基礎控除が下がったことにより、相続税の支払いが必要な人が増えました
相続税改正・国税庁pdf

▶一次相続と二次相続

⑤一次相続・二次相続

✿一次相続とは
たとえば、両親のうち父が亡くなった時に配偶者と子供が相続人になる場合言います。

✿二次相続とは
一次相続を行った後に、配偶者も亡くなった場合の相続を言います。

一次相続では、配偶者の生活を考えることが必要となり、二次相続では兄弟姉妹間のトラブルが起きないようにすることが必要となりますので、ここは慎重に考える必要があります。

一次相続と二次相続の特徴

◩一次相続(登録免許税の節約)

仮に、父が亡くなった時点で母に名義を移し、母が亡くなった時点で子供に名義を移す(二次相続)となると、それぞれに登録免許税がかかります。
一次相続で、父から子供に直接名義を移せば、登録免許税が半分となり、登録免許税の節約になります。

✿登録免許税とは
登記手続きの際に国に納める税金のことを言います。
税額は土地や建物の評価額(固定資産税評価額)に税率をかけて計算されます。

所有権移転登記(土地)の場合→固定資産税評価額×2.0%
住宅用家屋所有権保存登記(新築物件)→固定資産税評価額×0.4%
住宅用家屋所有権保存登記(中古物件)→固定資産税評価額×0.2%

◩一次相続(配偶者に対する優遇措置)

また、一次相続では、配偶者に対する優遇措置が使えます。
大幅な税額の軽減や無税になる特典を使えます。

これに対し二次相続では

◩二次相続

①相続人に配偶者がいないため、配偶者の税額軽減措置が利用できません。
②子供が配偶者と同居していない場合は、小規模宅地の特例の適用が受けられない場合があります。
③相続人が一人減ることになるため、相続税の基礎控除額が600万円減少します。

これにより、二次相続の場合は一次相続より相続税の負担が重くなります。

また、一次相続では、母の存在もありますので、子供たちも多少納得いかなくても承諾するケースがありますが、二次相続では、子供たちだけの遺産分割になりますので、納得いかず、兄弟姉妹間でトラブルになるケースも多く発生します。
どちらが正しいということではありません。
家族全員で事前に話し合っておくことが理想ですが、お悩みの場合は、税理士や司法書士の先生と相談しながら決めていただけたらと思います。

🌸まとめ

不動産の名義変更をするということは、必ず理由があります。
所有権移転登記の手続きをする際は、その理由を記入する必要があります。
しかし、もっと大切なことは、その理由(原因)ごとの注意点です。

・売買価格の設定
・税金の必要有無
・税金の金額確認
・必要書類の有無
・相続人承諾の有無
・トラブル問題

名義変更の理由(売買・贈与・相続)に関して、このような注意点を事前に確認されることをおすすめします。

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