境界線確認時のトラブル&解決策7パターン!
更新日2020-07-11 (土) 23:58:30 公開日2019年3月2日
不動産売却時、重要となる手続きのひとつに「境界確定(土地と土地との境界を確定すること)」というものがあります。
個人同士の土地の境界について国は介入しませんので、当事者間での解決が必要です。
ブロック塀や柵などが土地の境界に設置されている場合はある程度の信用性もありますが、空き地の場合は境界が不明確ということが少なくありません。
境界を確定することは、必ずしなければいけないと法律で決められているものではありませんが、取引慣習上不明確である場合は必ず行っています。
なぜなら境界を確定しないまま取引をすると、後々大きなトラブルになる可能性が大きいためです。
トラブルになるのはなぜか...
不動産の情報を見るとき土地面積が記載されている不動産の登記事項を確認しますが、土地面積だけでは境界を把握することは不可能で、土地面積も本当に正しいのかさえ明確ではありません。
そんな状態で不動産の売買を行えば後になって隣地の所有者から「境界が違う」という申し出があり訴訟になることもあります。
そのようなトラブルにならないように一般的には境界確定を行っています。
ここでは、境界線確認時のトラブルとその解決策7パターンについて解説します。
★目 次★
境界を確定する方法
誰が境界を確認しどんな手続きをするのか
境界の確認は、該当する土地に面している隣地の所有者立ち合いのもと、土地家屋調査士が行います。
確認が終了した時点で当事者間で境界確認書を作成し、確認したことの証として署名捺印をします。
この手続きをすることで双方の所有者ともに境界確認書に記載された境界を認めたことになります。
境界確認書(見本)
境界確定にかかる費用
境界確定にかかる費用は、土地の(場所・形状・広さ)や、隣地の所有者が公的機関だった場合など、状況により異なってきます。
相場では、30~100万円の範囲になることが一般的です。
トラブルと解決策
境界を確認する際、隣地の所有者とトラブルになる可能性があります。
ここからは、7つの問題点とその解決方法についてご案内します。
①遠隔地に住んでいる
②忙しい、面倒
③無関心
④人間関係
⑤主張の相違
⑥登記住所に住んでいない
⑦所在不明};
①遠隔地に住んでいる
【問題点】
隣りの人が遠隔地に住んでいて、なかなか立ち合いに来てくれないというケースです。
たとえ、遠隔地に住んでいても、立ち合いには応じてくれることが一般的ですが、中には、いろいろと理由をつけて応じてくれない場合もあります。
【解決策】
境界を確認するための資料(公図・測量図・既存の境界標・塀の位置がわかる写真)等を隣接地の所有者へ郵送します。
場合によっては、境界線の説明を動画撮影してCD等を送付することもあります。
今まではこの方法で境界確認はできています。
②忙しい、面倒
【問題点】
忙しい、面倒だと言われ、応じてくれない人もいます。
【解決策】
実はこのようなケースは意外に簡単です。
朝でも夜でも日曜日でも、相手の都合にあわせることで、だいたいは上手くいきます。
境界でこじれる可能性は少ないと言えます。
③無関心
【問題点】
A:境界についてまったく無関心な方というのは、資産価値が少ない土地や何も利用されていない土地に多くみられます。
たとえば次のパターンです。
・通路の部分に名義だけが残っている
・長年空地で何も利用されていない
・相続登記もされずにずっと放置されている
・道路に面していない囲繞地
✿囲繞地(いにょうち)とは
周囲を囲まれていて公道に接していない土地のことを「袋地」と言います。その袋地を囲んでいる部分の土地を囲繞地と言います。
B:無関心というより、境界については問題ないけど書類に印鑑を押すのが怖いために無関心を装う人もいます。
「おじいちゃんの代から書類にはハンコだけは押すなと言われてたから」と言う方も実際にいらっしゃいました。
【解決策】
A:の場合
現地に来てもらうのは難しいのですが、写真や図面で説明して対応しています。
B:の場合
昔は実印で印鑑をいただかなければいけない書類があったのですが、現在、隣地に関する書類はほぼ認印で対応できるようになっています。
書類については十分に説明します。
書類の内容、仕様目的、提出先、十分に説明して、ご理解をいただくようにしています。
④人間関係
【問題点】
隣りの人と人間関係に問題があり、感情的に応じてくれないというケースです。
【解決策】
人間関係の修復というのは、私たちにはできないことです。
出来ることは、十分に相手の話を聞くということだけです。
最初は感情が高ぶっていても、次第に落ち着いてくることが多くあります。
十分に話を聞くことで解決に導いていけるケースも多くあります。
⑤主張の相違
【問題点】
隣りの人と境界の主張が相違する場合があります。
【解決策】
この場合も、相手の主張を十分に聞いて、場合によっては双方歩み寄って境界を決める方向に進めていくのが良いと思います。
◩境界の紛争について
✿境界紛争とは
土地の境界が不明であることに起因する所有権の範囲に関する紛争を解決する制度を言います。
(例)33㎝の幅で境界線の主張が相違する場合
Aさんが主張する境界線とBさんが主張する境界線が33㎝の幅で相違し、奥行きが10mだとすると面積で言うと3.3㎡(1坪)となり坪単価が50万円の土地であれば50万円の価値になります。
境界の争いで筆界特定制度を使ったり、境界確定訴訟をした場合、測量費用、弁護士費用、また時間的コストを考えれば経済的にはまったく割にあいません。
法務省:筆界特定制度
そのため、当事者同士の話し合いで境界を決めるのがベストであると思います。
⑥登記住所に住んでいない/⑦所在不明
【問題点】
隣りの人が登記記録に記載されている住所に住んでいない。あるいは行方不明である。
【解決策】
近隣の人への聞き込みや、固定資産税などの資料調査、住民登録などから追跡調査を行います。
しかし、固定資産税の記録は市町村によって閲覧ができる場合とできない場合があります。
さらに、住民票の保存期間は5年です。
5年以上前に他の市町村に住所を移転している場合は追跡調査ができません。
また、住民票等は厳密な個人情報になりますので、第三者が請求すると正当な理由があって請求したとしても「〇〇さんがあなたの住民票を請求しました」という通知が行く場合があります。
それが元で逆に所有者の感情を逆なでする可能性もあります。
そのため、個人情報の調査は細心の注意を払って行う必要があります。
他にも、いろいろな理由で境界を確認できない場合があります。
ここからは、その対処方法を3つご案内します。
対処方法1:分筆・土地地積更生の登記申請
分筆または土地地積更生の登記を申請します。
もちろん申請するためには、事前に法務局の登記官との打ち合わせが必要です。
✿分筆とは
登記簿で一個の土地とされているものを幾つかに分割することをいいます。
✿土地地積更生の登記とは
実際に測量した土地の面積と、登記簿の面積が異なる場合に、登記簿の内容を実際に測量した土地の面積に更正する手続きのことをいいます。
申請することで、どうしても立ち合いに応じてくれない人などに対し、法務局から境界立ち合いを求める通知が送られます。
立ち合いの通知(ハガキ)は、1番から4番までのいずれかに〇をつけて回答するようになっています。
その内容は
・1番:隣地の境界に異議がないので立ち合いしません。
・2番:指定日時、指定場所で立ち合いします。
・3番:指定の日時に立ち会いすることはできません。
・4番:都合がつかないため〇月〇日〇時に調整をお願いします。
この通知に対して隣地の所有者がいずれかに〇をつけて回答を返送するしくみになっています。
公的機関からの通知になりますので、今まで立ち合いに応じなかった人も何らかのリアクションをする可能性があります。
仮に隣りの所有者が、この通知も無視した場合は、分筆、土地地積更生の登記が却下されることがありますが、これについては登記官の裁量によります。
たとえば、先日、隣地がずっと空き家になっていて、近隣の聞き込みをしても、もう1年以上その家に所有者が帰ってきてないという事例がありました。
住民登録も空き家の住所になったままでしたので、それ以上追跡調査はできませんでした。
当然、法務局から先ほどの通知をしてもらったのですが、やはり回答はありませんでした。
立ち合いの日時に登記官が来て、現地の立ち合いをしたのですが、隣地の人は立ち合いすることはありませんでした。
結果的に、法務局の登記官の判断(裁量)で、その申請は申請通り分筆の登記をしていただくことになりました。
対処方法2:売却部分の分筆
売却する部分だけを分筆するという方法です。
これは法務局の地積測量図や土地区画整理の確定図などの資料や現地の状況でわりと境界が明確な場合に行える手段になります。
たとえば、Bが立ち合いに応じてくれない土地だった場合、分筆をしてその部分のみ切り離してA部分の土地だけを売却するという方法です。
この方法をとる場合も、先ほどの法務局の立ち合い通知が発行される場合があります。
対処方法3:筆界特定制度の利用
筆界特定制度は法務局に申請します。
✿筆界特定制度とは
法務局の登記に基づく土地の境界(登記されている土地の地番と隣接地の地番の堺)を筆界と言います。実際の土地で筆界の位置を特定する制度を筆界特定制度と言います。
筆界特定登記官が資料や現地測量の結果に基づいて機械的に境界を判断します。
隣接地所有者の同意がなくても、土地所有者の申請のみで行えますので手間や時間を節約することが可能です。
また、筆界が特定された後は、資料が法務局に保管され、誰でも資料の閲覧ができるようになります。
その筆界に基づいて分筆登記、地積更生登記の申請をすることも可能です。
隣地の所有者が行方不明、境界の立ち合いに応じない、または境界の主張に相違がある、この場合に有効な方法であると思います。
しかし、その半面デメリットもあります。
・期間が1年以上かかっってしまう場合がある
・多額の費用がかかる
・法務局の登記で定められた区画として定められるため変更不可
このようなデメリットもありますので、筆界特定制度を使うのは、最後の手段だと思います。
可能な限り、当事者同士の話し合いで解決することが理想です。
境界トラブル以外の近隣トラブル
近隣トラブルとしては、ご案内してきた境界トラブルの他に次のようなトラブルも発生する可能性があります。
マンション内のトラブル
マンションでは境界というものがないため、当然、境界トラブルの心配はありません。
しかし、マンションならではの問題があります。
①騒音問題。
マンションは戸建てと違い、壁で仕切られているだけとなりますので、売却時に限らず近隣トラブルになることが少なくありません。
②共有部分の使用方法
それぞれ価値観の相違により、居住者同士の関係がうまくいかない場合、管理組合の運営にも影響がでます。
管理組合がうまく機能しなければ共有部分の劣化・管理費滞納などの問題が発生し、結果的にマンションの価値を落とすことになり兼ねません。
売却しようとしても、そのような問題があれば高く売れない可能性もでてきます。
下水、配管の問題
高低差のある斜面に建つ住宅は、住宅より下水管の位置が高い場合があります。
その場合、当然排水することができません。
対策として、仮に距離が離れていても、住宅より低い位置を流れている下水道管に接続することになります。
これは法律で認められている排水方法なのですが、排水管から下水道管までの長い距離を配管で繋ぐことになりますので、場合によっては、近隣の敷地を通過する必要がでてきます。
そのことが原因で近隣トラブルが発生するか可能性がないとは言えません。
木の枝や枯葉の問題
隣接するお宅同士で木の枝や落ち葉に関する苦情、クレーム、トラブルは意外と多いものです。
・木の枝が屋根の上まできている
・枝によって日当たりが悪くなった
・彼が庭に落ちて掃除が大変
近隣トラブルについて、売却予定の戸建ての物件が該当するようであれば、その点も不動産会社に告知されることをおすすめします。
まとめ
境界確定は、不動産の売買をする際は、マンションなどそもそも必要としない物件を除き、必須とも言える手続きです。
しかし、実施しなければいけないと法律で義務づけられているわけではないため、買主が境界確定に関するリスクを背負える場合は、未確定の状態で売買することもできます。
これを「公簿売買」といいます。
仮に、売主と買主が親族で、親族間売買をする場合、買主である親族がリスクを背負うのであれば、境界確定をすることなく売買することは可能です。
ただし、境界確定をしなかったことにより、後々トラブルに発展しないとは限りません。
親族間であったとしても、可能であれば境界確定をすることをおすすめします。
また、境界線の確認ができない場合、土地の売却は難しくなります。
売却できたとしても、相場よりかなり安い価格になります。
このように、境界確認はあらゆるトラブルやリスクを伴いますので、とても重要な手続きとなります。
総合的に、近隣との関係がうまくいっていない不動産は「価値が下がってしまう」と言えます。
自分が所有する不動産の価値を下げないためにも、近隣との関係には気をつけた方が良いのかもしれません。
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