減税効果!? 相続税とタワーマンション購入の関係
更新日2020-07-11 (土) 23:17:18 公開日2019年11月2日
皆さんは、「タワーマンションを購入すると相続税の減税効果がある」ということ、そして「タワーマンションの固定資産税等について税制改正された」ということについてご存知でしょうか。
ここでは、その2つについて解説します。
★目 次★
✿タワーマンションとは
タワーマンションに関する法的基準や階数の定義などはありません。
ただし、建築基準法や消防法等では建物の高さによって異なる基準が設けられています。
一般的に高さ60m以上(階数にすると20階建て)の建物を超高層建築物という考え方をされており、該当する住居用建築物をタワーマンションと呼んでいます。
タワーマンション購入で節税となるしくみ
結果を先に言えば、タワーマンションの「時価と評価額の差」が節税効果となるポイントです。
時価とは:実際に売却や購入で取り引きされる金額
評価額とは:相続税を計算する時に「この建物はいくらくらい」と評価(計算)された金額です。
タワーマンションの場合、時価と相続税を計算するときの評価額に大きな開きがでます。
なぜタワーマンションは時価と評価額に大きな開きがあるのか
時価と相続税を計算するときの評価額に大きな開きがでる理由は、家屋の相続税評価額の計算方法が関係しています。
ここについては後ほど詳しく説明します。
不動産というのは土地と建物(家屋)の2つがあります。
タワーマンション節税のポイントとなるのは建物(家屋)の評価額です。
なぜ建物(家屋)だけ?土地は?
マンションの土地は、全敷地の評価額にその部屋の持分割合を掛けて計算します。
マンションの階数が増えるほど部屋数は増えますので、1戸あたりの持分割合は小さくなり、1戸当たりの土地の評価額も安くなるのです。
たとえば、2階建てのマンション(低層階)であっても計算方法は同じですが、タワーマンションと比べると1戸あたりの持分割合は大きくなり土地の評価額も高くなるということです。
タワーマンションの土地の評価は、このように細分化されて少なくなるため、そこまで関係ないと言えます。
あくまでも時価と相続税を計算するときの評価額に大きな開きがでるのは建物(家屋)の評価額です。
家屋の相続税評価額の計算方法
相続税の申告をする時に家屋をどのように評価するのでしょうか。
相続税の評価額の計算方法を見てみましょう。
【家屋の相続税評価額】
自用家屋=固定資産税評価額
貸家=固定資産税評価額×70%
✿自用家屋とは
自分で住んだり、事務所を開くなど、自分で使うための家屋
この場合、固定資産税評価額がそのまま相続税の評価額になります。
✿貸家とは
自分で住むのではなく人に貸した場合です。
この場合、固定資産税評価額の70%となりますので30%OFFの金額で評価されます。
✿固定資産税評価額とは
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地・マンション・一戸建ての所有者に対し課せられる税金ですが、この固定資産税の基準となる価格を固定資産税評価額と言います。
固定資産税評価額は、相続や不動産売買等で相場を調べるときの基準にもなります。
なお、固定資産税評価額は、3年に1度見直しが行われます。
固定資産税評価額の確認方法
①固定資産税課税明細書
毎年春頃になると市区町村から1月1日時点の土地・マンション・一戸建ての所有者へ固定資産税の納税通知書と課税明細書が届きます。
この課税明細書に固定資産評価額が記載されています。
課税明細書は売却をする時など、売主から買主へ引き渡す必要がありますので、なくさないように保管しましょう。
この課税明細書を紛失してしまった場合は、次の方法で固定資産税評価額を確認できます。
②固定資産税評価証明書の取得
不動産を管轄する役所等で固定資産税評価証明書を取得することで固定資産税評価額を確認できます。
取得の際には身分証明書(運転免許証・健康保険証など)が必要です。また所有者以外の人が取得するばあいは委任状が必要になります。
③固定資産課税台帳の閲覧
各市町村にて固定資産税台帳を閲覧することが可能です。
詳しくは不動産管轄の市区町村にお尋ねください。
一般的な評価額の節税
タワーマンションの評価額を説明する前に一般的な評価額の節税についてご案内します。
固定資産税の評価額というのは実際に購入する金額もしくは建築した金額よりかなり安く設定されます。その設定は、おおよそ「建築価格の60%~70%」です。
また、先ほどもお話しましたが、購入した物件を投資用として人に貸した(賃貸))場合は、さらに30%引くことができます。
実際に数字をあてはめてみましょう。
たとえば5,000万円の財産を持っている人が亡くなったとします。
◎預金として5,000万円持っていた場合
固定資産税評価額は5,000万円で計算されます。
◎5,000万円を使って家を建てている場合
固定資産税評価額は高くて70%の3,500万円で計算されます。
この時点でまず30%分評価額を軽減することが可能になります。
◎その家屋を人に貸している場合
3,500万円の評価額から更に30%引かれます。
固定資産税評価額は2,450万円になります。
預金として持っていた場合と比較すると▲2,550万円となり半額以下の評価となるわけです。
タワーマンション評価額の節税
話しを戻して今回のテーマであるタワーマンション購入による節税のしくみについて解説します。
たとえば、1億円で購入したタワーマンションの1室の場合、固定資産税評価額は2,000万円~3,000万円ほどになることがあります。
なかにはもっと安い固定資産税評価額もあります。
このようにタワーマンションの場合、時価(実際に売却や購入で取り引きされる金額)と固定資産税評価額の開きが非常に大きいのです。
固定資産税評価額のつけ方
先ほど、時価と固定資産税評価額の開きが大きい理由は固定資産税評価額の付け方にあり、タワーマンション節税のポイントとなるのは建物(家屋)の評価額になるというお話をしました。
ここからは、タワーマンションの建物(家屋)の固定資産税評価額についてご案内します。
タワーマンションの固定資産税評価額というのは、市区町村の固定資産評価委員と呼ばれる人がつけていくのですが、家屋の評価額の付け方は基本的に材料費や施工方法といったものだけを使って計算されているのです。
そのため、たとえばタワーマンションを建てるのが、人気エリア(東京23区の地価が高いところなど)であっても、山の奥であっても、まったく同じ(構造・施工方法・材料)であれば、場所がどこであっても評価額は同じということになります。
人気エリアと山奥で同時に売りに出すとどうなる?
しかし、人気エリアと山奥で同じ評価額のタワーマンションを一緒に売りに出したらどうでしょう。
現状では、やはり人気エリアに購入予定者が集まります。
当然ながら、売買金額は人気エリアが高くなります。
ただ、固定資産税評価額は同額です。
その結果、次のような現象がおこります。
六本木のタワーマンション
購入金額:1億円
固定資産税の評価額:2,000万円
時価と評価額の差が大きい
山奥のタワーマンション
購入金額:3,000万円
固定資産税の評価額:2,000万円
時価と評価額の差が小さい
タワーマンションは、1階2階の低層階より高層階の方が人気がありますので、まったく同じ部屋の構造であっても低層階より高層階が購入金額は高くなります。
しかし評価額は同じですので、1階と最上階を比較すると最上階の方が時価と評価額の差が大きくなります。
タワーマンションと相続税の関係
このしくみにより、相続税対策として使うのであれば、人気エリアの高層階物件ということになります。
税制改正(居住用超高層建築物に係る課税の見直し)
上記、財務省のホームページにあるように税制改正が入りました。
この税制改正は固定資産税と不動産取得税の税制改正です。
固定資産税については、高層階になればなるほど低層階より高くなるという税制改正が行われています。
2018年の1月1日以降に新築されるタワーマンションが該当します。
税制改正で「タワーマンション節税は出来なくなるのでは…」という声もあるようですが、これは相続税の改正ではないため、相続税を節税するという意味でのタワーマンション購入は現時点では有効であると言えます。
注意点
◎税制改正
上記、税制改正の相続税については現時点では有効ですが、今後の改正により変わる可能性はあります。
◎税務署からの指摘
相続税減税のためだけにタワーマンションを購入していると税務署から指摘された場合、否認されるケースがあります。
例:「相続発生の3年前に購入→相続発生後1年以内に売却→否認」
この取引に対し「この物件購入は相続税を減らすためだけにしたこと」ということで相続税評価(固定資産税を低い金額で評価する)を認めないという判断がされたケースもあります。
このようなこともありますので、相続税対策のためだけにタワーマンション節税を狙って購入するというのは、かなりリスクのあるやり方と言えます。
今回、タワーマンションを購入した場合の相続税の節税対策について説明しましたが、正直、この方法はあまりおすすめしません。
なぜなら...
(例)
・相続税の節税対策のために1億円で物件購入
・相続税が仮に1,000万円安くなった
・その物件を将来売却した時8,000万円でしか売れなかった
相続税は確かに1,000万円安くなっているのですが、結果的に2,000万円損をするのであれば、物件購入をしないほうがよかったのではないかという事に成り兼ねません。
もともと不動産投資が好きな方であれば、話はまったく変わってくるのですが、相続税を減らす目的のためだけに、物件を購入すると、価格の下落によるリスク等があるため、最終的に得するのか、損するのかは蓋を開けてみなければわかりません。
価値が下がらない物件があれば良いのですが、そういった点を慎重に考える必要があります。
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