住宅税制における「居住用財産」とは何か!?

更新日2020-07-11 (土) 23:17:48 公開日2018年11月4日

住宅の購入・所有・売却にあたり、所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税など様々な税金の支払いが必要になります。

税金

これらの住宅の税制の規定において、よく登場するのが「居住用財産」という用語です。
さて、この「居住用財産」が何を指すのか、ちゃんと知っている人はどれくらいいるのでしょう!?
実は、詳しく知ることでメリットを受けることもあれば、知らないことでデメリットとなることもあるのです。
ここでは、この「居住用財産」についてあくまで住宅の税制における角度から解説してみたいと思います。

マイホームと居住用財産

実は、住宅の税制における角度から見た場合「自分が住む家(マイホーム)」が必ずしも「居住用財産」だとは限りません。
一般向けの解説、例えば大辞林などでは「マイホーム」とは自分の家、また家庭、我が家、借家に対して持ち家とあります。
しかし、住宅の税制における角度から見た場合の居住用財産とは、この広い意味より少々狭く所有するマイホームを位置付けしているのです。
『マイホーム≠居住用財産』を理解しつつ『住宅の税制での居住用財産』何を指すのか、その主なポイントをみていくことにしましょう。

マイホーム=居住用財産ではない

自分が所有し、住んでいることが前提

「居住用」といっても第三者が住むためではなく、あくまでも所有者自ら居住するための家屋およびその敷地(借地権の土地を含む)が「居住用財産」になります。

具体的には、購入時から売却するときまで住んでいれば、とくに難しいことは考えなくてもいいでしょう。
しかし、最近よく見受けられることですが、転勤を機に先に引越しをして住まなくなってから、既に住んでいない空き家か賃貸中の自分所有土地建物を売却するときには、その期限や状態に注意しなければいけません。

期限と状態について

その自分所有土地建物に住まなくなった日から3年が経過した年の年末までに売却をすれば、居住用財産としての特例などを受けられるのですが、それを過ぎれば一般の不動産と同じ扱いとなります。

たとえば、2015年4月に新しい家へ引越したときは、2018年12月31日までに自分所有土地建物を売れば居住用財産とみなされます。
また、売却までの期間を第三者に貸していても特例の適用対象となります。

尚、余程の事情がない限り1月1日に引越しをする人はいないと思いますが、居住の用に供されなくなった日が2015年1月1日なら期限は2017年12月31日までとなり、2015年1月2日なら期限は2018年12月31日までと、1日違いで1年の差が生じることとなります。
役所へ提出する転居届を1月1日付にするような場合には、面倒なことにならないように注意しておきましょう。

状態で言うと、自分が住んでいなくても、家族が住んでいれば特例などを受けられる居住用財産となります。
転勤や転地療養などで所有者本人が住まなくなっても、配偶者など家族が引き続き住んでいて、その事情が解消すれば再び同居すると認められるときは居住用財産として扱われるます。
つまり、単身赴任でご主人だけ勤務地に借家を借り転居しても、元の家にその家族が住んているのなら問題はないということになります。
ただし、単身赴任先で別の家を買うなどすれば、その者が主として居住の用に供していると認められる一方の家だけが特例の対象となることは注意しましょう。

確かなのは、たとえ居住したのが短期間であっても「入居目的が一時的ではない」と認められれば「居住用財産」となるということです。

配偶者などではなく「生計を一にする親族」が住んでいる家の場合

その家に所有者本人が以前住んでおり、生計を一にする親族が引き続き居住し、かつ、所有者本人の現在の住まいは借家など(本人の所有ではない)の要件を満たせば、居住用財産として取り扱われることとなります。
ただし、その親族が住まなくなった場合には1年以内(3年目の年末ではない)に売却しないと特例が適用されなくなるので注意が必要です。

売却前に建物を取り壊す場合は要注意

古くなった建物を取り壊してからその敷地を売却するときは、十分に注意しなければなりません。
建物がそのままであれば「住まなくなってから3年目の年末」までに売却すればいいのですが、建物を取り壊して更地にした場合には「取り壊しの日から1年以内」の要件が加わるのです。
つまり、「住まなくなってから3年目」かつ「取り壊しから1年以内」でなければ特例などを受けられる居住用財産にはなりません。

また、建物を取り壊してから売買契約締結までの間にその土地を駐車場、資材置き場、仮設建物の敷地などとして貸していたときも「居住用財産」とみなされなくなります。

ただし、災害により建物が滅失した後にその敷地を売却するときはとくに制限がなく、「滅失により住まなくなってから3年目の年末」までは「居住用財産」として取り扱われることとなっています。
(注)東日本大震災により滅失した家屋の敷地の場合は、災害があった日から7年を経過する日の属する年の12月31日までとなります(「東日本大震災により被害を受けた場合等の税金の取扱いについて(個人の方を対象とした取扱い)【東日本大震災に関する税制上の追加措置について(所得税関係)】」をご覧ください。)。


別荘などの扱いは?

この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋、居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋、別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋などは特例などを受けられる「居住用財産」として扱われません。

特例などを受けられる居住用財産とは、あくまでも所有者本人が所有し「生活の拠点」として利用して住んでいることが前提なのです。

重要なのは、既に住まなくなった土地建物であれば、「住まなくなった時点において生活の拠点だったかどうか」が問題になるということです。

これからのライフスタイルの変化と居住用財産

ライフスタイルの変化により、二つの地域に住まう人がこれから次第に増えていくことでしょう。
わたしの近くにも徐々に多くなりつつあります。

また、親からの相続などにより複数の住宅を所有することになるケースも増加が見込まれています。
これらの場合、どちらの家が自分の生活拠点だとも言えないような場合が生じるかもしれませんが、不動産の売却などを計画するときには、特例が利用できる居住用財産の考え方を知り、あらかじめ税金の支払いのことも考えておくようにしましょう。

なお、特例措置などの適用にあたっては、それぞれの税金毎にその要件が定められています。
くれぐれも「居住用財産であること」だけが特例が利用できる要件ではないので、必要に応じて確認しましょう。

適用要件チェック表

居住用財産を譲渡した場合の特例の適用要件について、チェックしていただくためのものが国税庁ホームページにあります。
この表をご自分でチェックし、確定申告書、譲渡所得の内訳書( 確定申告書付表. 兼計算明細書)及び添付書類とともに提出することとなっています。

☛ 居住用財産を譲渡した場合の特例適用チェック表【平成30年分用】

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