ホームインスペクションについて確認しよう!
更新日2020-07-11 (土) 23:21:56 公開日2019年1月22日
「ホームインスペクション」をご存知でしょうか?
✿ホームインスペクション(住宅診断)とは
ホームインスペクター(住宅診断士)が、第三者的な立場、専門家の見地から建物の安全性・劣化状況・欠陥の有無・改修すべき箇所やその時期などについて調査し、おおよその費用を見極め所有者にアドバイスを行うことをいいます。
✿ホームインスペクターとは
ホームインスペクターは、言わば、物件(住宅)のお医者様です。
ここでは、「一級建築士兼ホームインスペクター」と「築20年の木造アパート(4棟)を所有する物件オーナー」を例にして、ホームインスペクションについてご案内します。
🏠ホームインスペクションはどんな時に利用するのか
居住中の住宅をはじめ、物件の購入時や売却時、賃貸物件の運営時」どのタイミングでも利用できます。
それぞれのタイミングでホームインスペクションを行うことで、物件の状態を把握することができますので安心して取引ができます。
所有されている物件であれば、定期的な点検をおすすめします。
物件が現状どのような状態であるかということを物件オーナー自身が知らなければ、後々困ったことになり兼ねません。
さまざまな不具合や、修復方法などを知る事によって、そこからまた長く使えるということがホームインスペクションを行うことでわかります。
不動産の売却をお考えの方は次の所有者、不動産を相続する方は次の世代の方へ引き渡す前に、把握しておくべきだと思います。
もし、そのまま不具合などに気付かず、売買取引や相続が成立した場合、後になってもめるということも少なくありません。
そのようなトラブルを未然に防ぐために、最低限のレベルだけでも検討された方が良いのではなかと思います。
米国では取引全体の70〜90%の割合でホームインスペクションが行われており、既に常識となっています。
日本でも急速に普及しはじめています。
出典:(株)矢野経済研究所
🏠ホームインスペクション調査時の服装
調査の際、床の状況を見るためにも、必ず新しい靴下をはくようにしています。
スリッパであれば、床なりなどに気付きにくいためです。
床を踏んだだだけでギシギシなることもあります。
他にも気づいたことがあれば、すべてオーナーさんへお伝えします。
🏠ホームインスペクション作業時間
建物面積が100m2(約30坪)程度の場合で2~3時間かかります。
物件の規模や調査範囲により異なってきます。
🏠ホームインスペクション調査費用
◩注意すること
・依頼範囲によって料金は異なります。
・業者によって料金が異なります。
・安いと言うだけで依頼すると、質が落ちてしまい、依頼した意味がなくなる可能性もあります。
・裏で不動産業者と提携している場合もあります。
見えない問題点もありますので、依頼する業者は慎重に選択されてください。
◩次の価格はあくまでも目安です。
基本的な調査範囲の料金・費用
一般的に、目視による一次診断の場合、5~6万円前後が多いようです。
✿基本的な調査範囲とは
床下や屋根裏を点検口などからのぞいて確認する範囲です。
床下や屋根裏の点検は含みません。
床下や屋根裏の点検(基本的な調査範囲の料金を含む)
9~14万円程度
延べ床面積と何部屋見るかということで費用が変わってきます。
3DK、2LDKなど50㎡超えてくると料金も高くなります。
機材を使用する詳細診断の場合、10万円以上になることもあります。
🏠インスペクションの流れ
🏠インスペクションではどんなところを調査するのか、どこまで診てもらえるのか
▶屋外調査(建物外部)
まずは、外観をさまざまな角度から調査します。
外観の調査の結果、室内を再確認しなければならないことがあるためです。
◩基礎
ひび割れ・モルタルの浮き状態・劣化・水切りの状態など
◩軒裏
割れ・劣化・漏水跡など
軒裏に雨染みがあったりすると、雨漏りをしている可能性がありますので室内から再確認します。
◩マンホール
ゴミが詰まったりしていると臭いが逆流することがあります。
ゴミが多い場合は、高圧洗浄やデッキブラシなどで流して除去します。
◩外壁面
ひび割れ・仕上げ材の浮きや劣化状態など
ひび割れがあれば、0.4ミリくらいのピアノ線をひび割れ部分に入れ深さがどのくらいあるかを調査します。
あまり入っていかないようであれば表面的なひび割れということになります。
また、打診棒の音を聞くことでコンクリートに空洞がないかを確認します。
✿打診棒とは
壁やタイル、モルタルやコンクリートなどが浮きや剥離などを起こしていても、肉眼ではなかなか確認できないため、叩いたりして音を聞き分け、内部の状態を判断する際に使う専用の棒を言います。
▶オーナーへの中間報告
外観調査を終えたあと、物件オーナーへ中間報告をおこないます。
(中間報告例)
全体的には良好な状態でした。
部分的に保守や交換された方がいいと思われるものがありましたのでご報告いたします。
◩設備環境(消火器)
築年数から考えると、そろそろ交換の時期ではないかと思います。
全体的に点検していただけたらと思います。
◩設備環境(給湯器)
新しいものと、そろそろメンテナンスの時期になるものが混ざった状態でした。
その辺を設備業者さんと打ち合わせしていただくと良いかと思います。
◩通気口
通気の窓から目視可能な範囲で確認したのですが、床の部分に断熱材が入っていない仕様でした。
そこまで影響はないと思いますが、もし1階部分の改修工事などを行うようであれば、その時に断熱材を入れることも検討されたら良いかと思います。
▶室内調査
◩設備点検
玄関ドアの開閉状態・各窓の開閉状態・水道の水漏れ・換気扇ON/OFF確認・各電気のON/OFF確認・トイレまわりの確認・ドアノブの確認・お風呂まわりの確認・サッシの開閉状態・サッシ枠の状態・押し入れ・クローゼットなど
たとえば、換気扇の場合、ティッシュペーパーで確認します。
ティッシュペーパーも吸い付かないようであれば、完全にモーターがおかしいと判断しています。
◩水漏れ
(パッキン交換)
水漏れと一言で言っても、本体の漏水があったり、パッキンの交換のみですむ場合もあります。
パッキン交換ですむ場合は、一度取り外して、同じような形状のものと交換されるよう報告します。
パッキン交換は一般の方では難しい場合があり、業者に依頼される方もいらっしゃますが、水栓金具用のレンチ(2~3千円)を購入される方もいらっしゃいます。
(洗面台の水漏れの確認方法)
水を溜めると溢れ口から水が流れます。
まず、そこから漏水していないかを確認します。
水を溜めた状態で水位の低下がないかを確認します。
その後、一気に溜めた水を解放した状態で漏水していないかを確認します。
洗面台などの水漏れについては、このように段階をふんで確認します。
◩含水率系(がんすいりつけい)
含水率系とは、木材の水分を計測する機械です。
木材は必ず水分が含まれています。
ただし20%を大きく超えてしまうとカビたり腐ってしまう可能性があります。
たとえば屋根裏の暑い空間だったりすると、もしかすると湿度の影響などで水分量が高くなっていることもありますので念のために計測しています。
◩屋根裏
(換気ダクトの確認)
換気ダクトに穴が開いている場合は、気流漏れしてしまう可能性が高いため補修すべき事項となります。
換気ダクトの貫通部分も漏水有無の確認をおこないます。
(界壁:住戸間を区切る壁)
隙間などの問題確認します。
(金物)
ゆるみなどの問題を確認します。
(断熱材)
界壁面への断熱材の設置状況を確認します。
(木部)
欠損などを確認します。
(ジョイントボックス)
配線を接続するジョイントボックスの不具合を確認します。
(居室の上部)
不具合の確認をします。
(オートレーザーレベル)
オートレーザーレベルは建物の傾きを計測する機械です。
床からレーザーまでの高さがどの位置から計測しても一定であるかを調査します。
▶オーナーへの最終報告
室内調査を終えたあと、オーナーへ報告をおこないます。
(最終報告例)
◩浴室
おそらくパッキンが原因だと思われますが少し水漏れが見られました。
パッキン交換をされてください。
◩掃き出しサッシ
とくに問題はないとは思いますが、右側全体のネジがついていませんでした。
一応固定はされているので、もしかすると、下地がなくネジがきかなかったのかもしれません。
念のため業者に確認されたほうが良いと思います。
◩建物の傾斜
壁の傾きは問題なかったのですが、部屋の一部分だけ少し下がっているところがありました。
多少基礎が下がっている可能性があるかもしれません。
ただ、壁の傾きはそこまでありませんので、もしかしたら、その辺りの床にベットなどの重たいものを置いていらっしゃった(以前の居住者が)可能性もあります。
場合によっては、フローリングを一度剥がして中の状況を見た方が良いかもしれません。
🏠過去補修してもらった箇所の補修について物件オーナーからホームインスペクターへ再確認
ホームインスペクターからの調査報告を受けるのみではなく、物件オーナーが気になっている部分も、確認依頼を行うことができます。
1回目のインスペクションで、主に外壁の塗装を指摘されたため、業者に依頼して、その箇所を改修しました。
塗装の状況がきちんと補修されているかを見てください。
一般的な防水材を使い、とりあえず水が入らないような応急的な措置がしてあります。
ひび割れ幅が軽度な状況なので、とりあえずこのまま様子を見るということで大丈夫だと思います。
ひび割れが広がるようでしたら、その時に根本的な補修のレベルを上げていただけたらと思います。
🏠すべての調査が終わった時、物件オーナーの感想は?
築年数が古い物件だったので、一番心配していたのは、2階の屋根裏の界壁がちゃんと設置されているかということでした。
幸い、そこは問題ないということでしたので正直ほっとしました。
もし、建物の構造そのものに影響を与えるような問題があったりすると、ずっと運用していくのは難しくなると思います。
今後も、そのあたりをプロの視点で、定期健診という形で見ていただきたいと思います。
🏠ホームインスペクター(住宅診断士)検索
該当する項目を入力することで実務登録者を探すことができます。
所在地、連絡先、各業者のホームページなども閲覧可能です。
NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会 こちらから検索可能です。
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