不動産売却のタイミングと各地域事情について

更新日2020-07-11 (土) 23:32:46 公開日2018年10月20日

タイミング

不動産を売却される方から、よく売るタイミングによって『高く売れる「売り時」』ってあったりするのですかと質問を受けます。

私は、「はい、あります。ただ、一般的な高く売れる売れ時と、それぞれの物件に合った売れ時とはそれぞれ違ってきます。」と答えています。

一般的な売れ時とは、どの物件にも共通する売れ時としてのタイミングがあるということです。

物件での違いとは、マイホーム用のマンションや一戸建ての物件、マイホーム建築用の土地、投資用物件によって売れ時のタイミングが違うということです。

ここでは、この両面、どの物件にも共通する売れ時のタイミングと物件別で違う売れ時のタイミングを解説していきます。

また、各地域事情についても売却のベストなタイミングは違いますから、地域情勢も絡めてそのことも解説していきます。


どの物件にも共通する売れ時

不動産を売りたいけど、いつ・どんなタイミングで売りにだしたらいいか、その判断はむずかしいと思います。

ハテナ45

「不動産の売り時っていつ?」
「いま、売った方がいいの?」「判断方法は?」

そのような疑問や

「今、不動産が高くなっているから売った方がいいんじゃないかな?」
「今、買えなくなっているから、むしろ売ったほうがいいんじゃないかな?」
そのようにマーケットの情報に流された形で判断されている方も多くいらっしゃるようです。

売り出すタイミングで売却価格に大きな影響を与えることがあります。

売り時を判断する基準!
こういった場合は売却を考えるべき!
実は、そのようなタイミングが存在しています。

ただし、不動産の売却タイミングは、「売主様のご都合、売却したい理由」などによって異なってきます。

余裕をもって売却を計画される方もいらっしゃると思いますし、相続・転勤・離婚などで早急に売却して現金化したい場合もあると思います。

「早急に売却したい」とお考えの方は、こちらをご確認ください。

🏠売却のタイミング① 市場価格が上がっているとき

相場市場価格

これは、誰でもわかることですが、市場価格が上がっている時が、売却するタイミングと言えます。

不動産がブームになって、みんなが買うようになると、当然不動産の価格は上がっていきます。
市場価格や相場が最高価格になったタイミングで売却すれば、それが一番良いでしょう。

しかし、これには問題があります。

それは、いつが市場価格のピークなのか がわからないことです。
市場価格が最高に上がっている時に売却したいと思うのは当然のことです。
「まだまだ上がるのではないか」ということで、なかなか売却に踏み切れないということがあります。

ところが、市場価格というのは、上がったと思ったら下がり、下がり続けていると思ったら急に上がったりと、とても複雑な動きをします。

プロでもそのピークがいつなのかを見極めることは難しいのです。
まして、一般の方が市場価格の動きを見て、売却するタイミングを決めるのはかなり困難であると思います。

現在、東京オリンピックまでは、市場が良くなるのではないかと予想されていますが、もし、リーマンショックのようなことが起きれば市場価格は急激に下落してしまいます。

市場価格が上がっている時に売却したいと考えられるのであれば、ピークを見極めることは難しいのですが「不動産を買った時の相場と現在の相場を比較する」という方法があります。

買った時より、今の相場が高いのであれば、その時が売却する良いタイミングと考えることができます。

🏠売却のタイミング② 季節

不動産取引は2月から3月にかけて多くなります。
これは、年度の変わり目が4月ということ、また、お子様の卒業そして入学などが4月に始まることなどが関連しています。

他に、人事異動時期の関係もありますが、人事異動は業種によっても3月・4月・7月・9月・10月とバラつきがありますので、2月・3月に比べると微妙かもしれません。

季節

季節を目安に売却を考える場合、1月頃から準備をして、2月から3月に売却することがベストタイミングです。

ただし、この季節が売りたい人、買いたい人が、他の季節よりも増えるということですので、他の季節がまったく売れないというわけではありません。

🏠売却のタイミング③ 築年数

不動産の売却価格は築年数が大きく影響します。


🏠売却のタイミング④ 修繕コスト増

修繕は、築年数とも関係しています。
築年数がながくなればなるほど、給排水管などの設備機器、外壁の劣化、空調機器、・防水・内装リフォームなど、修繕に関わる費用が増えていきます

あるいは地方に所有する物件であれば、だんだん競争力を失っていきますので、競争力を維持するためには、それなりにお金をかける、あるいは建てかえることが必要になってきます。

修繕にお金をかけるなら・・・と考えた時が、売却するタイミングと言えます。

反対に、費用をかけて、修繕をきちんとおこなうのであれば修繕直後は売却するタイミングと言えます。
ただし、買主様に説明できるように修繕履歴を残しておくことが大切です。

アットホーム㈱で「一戸建て修繕の実態」調査をおこなっています。
この調査により、築年数が古いほど修繕費がかかっていることがわかります。

対象
・木造の新築一戸建てを購入
・そこに30年以上住んでいる人495名

調査結果
・平均築年数:35.8年 
・これまでに使った自宅修繕費 平均総額556万円
・修繕場所
 1位「外壁」84.4% 2位「給湯器」83.2% 3位「トイレ」「お風呂」76.0%

築年数別修繕費用分布(アットホーム)

詳しくはこちら
アットホーム(株)「新築一戸建て購入後30年以上住んでいる人に聞く『一戸建て修繕の実態』調査」の結果

🏠売却のタイミング⑤ 税金

税制の関連になります。

不動産を売却した場合、譲渡所得が発生します。

✿譲渡所得とは
不動産を売却したことによって生じた所得(利益)をいいます。
他の所得と分離して所得税(復興特別所得税を含む)と住民税が課税されます。

✿復興特別所得税とは
平成25年分の所得税から適用される復興特別所得税が創設されました 平成23年12月2日に東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)が公布され、「復興特別所得税」及び「復興特別法人税」が創設されました。
国税庁

なお、譲渡所得がマイナスの場合には課税されることはありません。

この税金の税率は、売却した不動産の所有期間によって変わります。

【S11】譲渡所得

所得期間5年未満の時に売却して利益がでた場合
「所得税+住民税」で約40%の税がかかってしまいます。

所得期間5年超の時に売却して利益が出た場合は
「所得税+住民税」で約20%と半減します。

ここからもわかるように、所有期間が短いときに売却した場合、税率は高くなります。

市場価格も上がっているタイミングで、それ以上に欲をださず、ある程度で売却を確定するということであれば、所有期間5年超での売却がベストタイミングと言えます。

🏠どの物件にも共通する売れ時・ベストなタイミング まとめ

■市場価格が買った時の相場より、今の相場が高いとき
■戸建の場合は、築15年まで
■マンションの場合は、築6年から15年くらい
■修繕しなくてはいけないけど修繕費が・・と考えるとき
■費用をかけて、修繕をきちんとした直後
■所有期間5年超のとき
■1月頃から準備をして、2月から3月に売却

さて、どの物件にも共通する売れ時・ベストなタイミングはご理解いただけたと思います。
さて、以下では、物件別で違う売れ時のタイミングを各々物件別にご説明しましょう。

マンション特有の売却タイミング

マイホーム用のマンションを売るときのベストタイミングは年2回あります。
2月から3月までと、10月から11月迄です。
この2回はどの物件にも共通する一般的な売れ時と同じです。

ではマンション特有の売れ時は有るのでしょうか?
はい、有ります。
売れ時というより、売り時と言えるかもしれません。

それは、1年を通しての時期ではなく、マンションの築年数によるものになります。
この築年数による売り時はマンション特有の税金や管理上の問題などに大きく関係しています。
また、以降ではこれからのマンションの動き(市況)も併せて解説しましょう。

中古マンション(首都圏)築年帯別価格

マンションは新築時の価格設定がかなり高く、築5年で約20%下落します。
築6年から築15年は、少しずつ下がっていきます。
築15年以降になると、下落は急激に激しくなります。

マンションの場合は、築6年から15年くらいが売却のタイミングと考えられます。

🏠税金を考慮した場合のマンション売却タイミング

マンションを売却する際の一つの判断基準に「譲渡所得税」の問題があります。
この「譲渡所得税」が売却のタイミングに大きな影響を与えることとなるのです。

この譲渡所得税は土地や建物などの不動産物件を売却したときに、その不動産を入手したときよりも高い金額で売却した場合、不動産を譲渡したときの利益=譲渡所得が発生します。

この譲渡所得に国税として所得税、地方税として住民税というそれぞれ税金がかかるのです。

この譲渡所得にかかる税金は、不動産の所有期間が5年以下の場合「短期譲渡所得」、5年を超える場合「長期譲渡所得」となり、それぞれにおいて所得税と住民税の税率は異なるのです。

例えば、マンションの所有期間が5年未満だと短期譲渡所得となり30%の所得税と9%の住民税が課税されてしまいます。しかし5年以上所有したマンションの譲渡益には長期譲渡所得となり所得税は15%住民税は5% となるのです。

この税率差はとても大きく、マンションを売る場合、所有期間5年未満なのか5以上なのかで納める税金額も違ってくることになり、当然に売るタイミングにも影響してきます。

▶買主の住宅ローン控除利用を考慮した場合

マンション、その中でもマイホームとしてのマンション売却を有利に進めるには、買主が住宅ローン控除を適用できるかどうかがポイントとなります。

買主の住宅ローン控除とは、10年以上の住宅ローンを使って一定の住宅を購入または新築または増改築を行った場合に、本来支払うべき所得税が控除される制度を言います。

買主がマイホームとしてマンションを買う場合、下記の条件のマンションでなければ、この住宅ローン控除は利用できません。
もし控除条件として定められた事項内のマンションで無い場合、買主は住宅ローン控除が使えなくなるため買う事を諦めます。従って売却する際に不利となります。

•購入するマンションの床面積が50㎡以上必要です。この場合の床面積は登記上の床面積となります。
•住宅ローン借入をする人自身が住むこと。但し自分以外の誰かが住む、例えば子供や親が住む家を自分名義の住宅ローンで借りる場合は対象になりません。
•中古住宅の場合は耐震性能を有していること。マンションの場合は鉄筋コンクリートなどの耐火建築物にあたるため築25年以内であること。※1

※1上記期間を過ぎても住宅ローン控除を受けることができる特例が有ります。
  詳細は専門家に是非確認してください。

注意)売却して得た譲渡所得に、「居住用の3,000万円控除」を利用し税金を支払わずに済ませた場合、次のマイホームが早い住宅購入の場合では「住宅借入金等特別控除」(住宅ローン控除)を利用することは出来ません。この場合、これらの控除制度利用はどちらか一つの選択となります。

上記のことから、マンションは築年数25年を超えると一気に売却が不利となります。

マンションの売却を有利に進めるためには、買主にとって「買いやすい築年数」である必要があります。
買いやすい築年数とは、すなわち「住宅ローンを組むのに税制面で有利な築年数」ということになるということです。

▶登記上の税制面で有利な築年数

マンションの床面積(登記簿面積)が50平米以上で、自宅として住む住宅であること、取得後1年以内の登記で中古住宅の場合は以下のいずれかを満たすものの場合、軽減税率が適用されます。従って購入者は買いやすくなることから売りやすいことになります。

(1)マンションなど耐火建築物は築25年以内
(2)一定の耐震基準を満たすことが建築士などにより証明されたもの

注)軽減を受けるための手続きは特に必要ない。登記の際に住宅が要件を満たしていれば、軽減された税率で税額が計算される。


 中古建物の所有権の移転登記  2%⇒ 0.3%へ
 住宅ローンの抵当権設定登記 0.4%⇒ 0.1%へ


🏠築年数が古すぎる

マンションの築年数が古すぎる場合、資産としての担保評価が付かないことがあり、住宅ローンの審査が通らないことがあります。また、審査を通過しても借入期間が制限され、35年などの長期でローンが組めないリスクがあるので、築古のマンションはなかなか売れないということになります。

※東京都心などにあるヴィンテージマンションなどは立地の良さや専有面積の広さ、取引価格が高いまま落ちない事、また建物のデザイン性や管理体制の充実などから古くても融資審査には特段不利とはならない場合があります。

このようにマンションの持つポテンシャルによって税金が大きく異なるため、売却のタイミングを検討する際には十分注意しなければなりません。

一戸建て特有の売却タイミング

中古一戸建て住宅(首都圏)築年帯別価格

築11から15年まではゆるやかな下落
築15年以降になると、設備の修繕費用なども大きく発生するため、価格の下落が激しくなります。
築15年から築30年になると下落は続き、その後一定の価格になります。
一定の価格になる理由は、建物価値がなくなり、土地だけの価格で取引されるためです。

戸建の場合、マンションと比べ、土地価格が基盤にありますので全体的に見て下げ幅は小さいほうですが、先ほどお話したとおり、築26年になると建物の価値はほぼなくなり、土地の価格のみで取引されるようになります。

このことから、戸建の場合は、築15年までが売却するタイミングになります。

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