「大手に任せているから」大丈夫!、でも売れない、どうして?

更新日2020-07-11 (土) 23:41:13 公開日2018年11月9日

売れない

不動産を既に売却中の方からの多いご質問で、「今、売却を大手に任せています。もうすでに任せてから3カ月が経ち、なかなか売れないで困っています。担当者からは値下げしましょう。という提案がありました。やはり言われる通り値下げしかないでしょうか?」

とか、「専任媒介契約で任せて既に4カ月。一回目の媒介契約更新時に売り出し価格を変更して1カ月が経ちました。ですが内覧者はまだ2組しかありません。このままで売れるのでしょうか?」

とか、「大手に任せておけば大丈夫だって思っていたから任せたのに、既に5カ月、いまだに売れなくて困ってます。一体私はどうしたらいいんでしょう?」

等様々。

なぜ、大手に任せたのですかと尋ねると、返答が決まって「大手が間違いない!って思ったから」ということ。

どなたも、大手に任せていれば安心!と思い、今はそのこと自体を不安に思っておられるのです。

どんなところが安心なのですか?、具体的に教えてくださいって聞くと、

①担当者がちゃんとした教育を受けてて営業能力がしっかりしている
②宅地建物取引士の有資格者で安心
③膨大な見込み客を保有しているため、広告しなくても買主が見つかりやすい
④多くの取引データから精度の高い査定額を算出できる。
⑤豊富な広告予算をもつため、様々なメディアに広告してくれる。
⑥厳重なコンプライアンスがあるので、不正行為は絶対しない。
⑦信頼と実績があるため、購入検討者も集まりやすい。

などなだ実にさまざまにあります。
さて、皆さん具体的にはどんな不動産仲介業者に売却を任せているのでしょう。
言わば、上記を網羅した不動産会社という事です。
 
因みに大手不動産仲介業者と言えば、下記のトップ4社になります。
①三井のリハウス
②住友不動産販売
③東急リバブル
④野村不動産アーバンネット

また、上記に続く下記不動産仲介業者も実績は申し分ないでしょう。

三井住友トラスト不動産
三菱UFJ不動産販売
みずほ不動産販売
三菱地所リアルエステートサービス
大京グループ
大成有楽不動産販売グループ
住友林業ホームサービス
東宝ハウスグループ
大和ハウスグループ
スターツグループ(ピタットハウス)
センチュリー21

如何ですか、どこも知名度抜群の不動産会社です。

しかし、そんな大手の不動産会社が売れないとは本当の事でしょうか。
検証してみたいと思います。

不動産流通機構[通称:レインズ]

さて、あなたは不動産流通機構[通称:レインズ]を知っておられますか?

もし、これからあなたがご自身の不動産を売却しようと考えられておられる場合、是非知っていてほしい便利ツールがレインズです。
レインズとは、全国約100%の不動産業者が入っている優一の物件情報発信ツールで、これは国土交通大臣の監督の下運営されています。
そして、通常、売却依頼を受けた不動産会社は、物件情報を宅地建物取引業法で定められた一定期間内に不動産流通機構「レインズ」に登録することが義務付けられています。

不動産流通機構[通称:レインズ]は画期的なシステム

不動産取引がオープンに行われるようになったきっかけを作ったのは不動産流通機構[通称:レインズ]が設立されたことによります。

1990(平成2)年、前身の財団法人首都圏不動産流通機構として設立され、1997(平成9)年に事業圏域を東日本に拡大して東日本不動産流通機構が出来ました。

蓄積されるデータを活用した調査・研究事業により、不動産流通市場のさまざまな資料・指標を公表することで、不動産取引の適正化・円滑化に取り組みたいとの思いから、宅地建物取引業法に基づいた不動産流通機構、通称「レインズ」が設立されたのです。
レインズの設立により、業者同士の不動産情報交換がよりスムーズになり、今現在東日本不動産流通機構(東日本レインズ)、中部圏不動産流通機構(中部レインズ)、近畿圏不動産流通機構(近畿レインズ)、西日本不動産流通機構(西日本レインズ)の宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣に指定された4つの団体(公益財団法人)の構成になっています。

レインズ登場で何が変わった

レインズ登場以前の不動産売買の物件情報は、その売却依頼を受けた不動産会社から先へは流れることはなく、その会社に立ち寄って紹介してもらわない限り、その物件を目にする機会が無いという状態でした。
窓口を多く持つ大手不動産会社の独壇場だったのです。
物件を探している購入希望者は、不動産会社ごとに回わらなければなかなか自分の思う通りの物件にたどり着けなかったのです。それによる弊害(後記参照)も出てしまいました。
その背景があり、このレインズシステムが導入され、インターネットを介して全国の大小を問わずの不動産会社が全国津々浦々の物件を探すことが可能になり、より透明性の高い健全な不動産取引ができるようになったのです。

レインズにより全国の不動産会社同士の物件情報が互いに共有できるようになったことで、売主・買主・不動産会社全てがメリットを享受できるという状態になったのです。
しかし、このレインズにはまだまだ大きな欠点があります。

レインズシステムにも重大な欠点が

では、欠点とは何か?
それは、売主の利益を損なう「物件情報の囲い込み」の横行です。

レインズに登録された物件情報は、原則として、全ての不動産会社に公開されることになります。
全国の不動産会社が営業活動やプロモーション活動を行ってお客様を探してくれるので、早期売却のチャンスが広がることになるのです。

しかし、一部の不動産会社はレインズを意図的に活用せず、物件情報を自社だけで囲い込み、売主様から早期売却のチャンスを奪っているという実態が存在します。
特に大手不動産仲介会社が、その「物件情報の囲い込み」を積極的に行う傾向があるのです。

(L)囲い込み

その状態を表すダイヤモンドオンラインの記事があります。

大手不動産が不正行為か流出する“爆弾データ”の衝撃

では何故、不動産仲介業者はそんなことをするのでしょうか。

レインズに物件情報を登録すると、全国の様々な不動産会社が買主を探してくることになります。
そうすると必然的に、売主・買主双方から仲介手数料をもらえる「両手取引」のチャンスが少なくなってしまうのです。

一般的な感覚からするとお客様の利益を最優先に考えるのが“正しい姿”だと思いますが、不動産売却の現場では過剰な営業ノルマを課される営業担当者が多く(特に大手と言われる不動産仲介業者に高い営業ノルマが課せられている)、お客様の利益よりも自分の営業成績を優先する傾向が確実に存在しているのです。

結果、冒頭に挙げた悩み『大手に売却仲介を依頼しても、なかなか売れない」となります。
この両手仲介が大手不動産仲介業者に任せてもなかなか制約しない原因だったのです。

では、以下では各現場で行われている行為を見てみます。

レインズ登録して、すぐに削除する

専任媒介契約と、専属専任媒介契約はその契約締結から一定期間の間にレインズに登録しなければいけなくなっています。
不動産仲介業者がレインズに登録すると、物件情報が全国の不動産業者へ公開されることになります。
レインズ登録と共に発行される「登録完了通知書」を売主が受け取ることにより、不動産仲介業者がレインズに登録したことが分かります。
しかし、この後すぐに不動産仲介業者はレインズから物件情報を削してしまいます。
「えっ、宅地建物取引業法で決まっているからそんなこと出来ないのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし、そんなことお構いなしに不動産仲介業者は自分の利益のためにレインズから物件情報を削してしまうのです。
売主様は 登録直後に任せた業者が削除していても確認することが出来ません。
これは不動産業者以外の方々がレインズを直接閲覧することができない仕組みになっているからです。

レインズ登録しても広告不可

レインズに登録されている物件には、広告不可のものが多数存在します。
広告不可という回答をする不動産会社では、広告不可はあくまで売主の希望という事にしてしまいます。
「ご近所の方に知られたくないという売主からの希望により広告不可」という理屈なのです。
しかしこれほど広告不可物件が多いと売る気が有るのだろうかと疑問を感じざるを得ません。
広告不可にすることで購入者見込み者へのアピールは確実に少なくなり高く売れる機会は失われるからです。 
ただ、物件を直接預かっている不動産会社は広告活動を行っているケースがあり、両手取引を狙うための手口としか考えられないのです。
広告不可にして囲い込みをする。結果として、売主様は早期売却のチャンスを逃してしまうことになります。
確かに、あまりに多くな広告は逆効果な面も有ります。ですのでどこでも良いから広告を出させることは良くありません。ただ、広告の質を吟味しチェックするのも売主様から任された不動産会社の役目なのです。

レインズ登録後は商談中

レインズに登録されている物件について、登録した不動産業者に確認すると商談中だと言われることが頻繁にあります。
「登録してすぐにです。」
実際に商談が入っているのであれば問題はないのですが、両手取引を優先するあまり、他の不動産業者には商談中と回答している可能性を否めません。
酷い事例では、商談中を理由に購入申し込みを断られた物件が、しばらくすると大幅に値下げされて、再度売り出されているようなことさえあるのです。
この意図とは?、やはり両手取引狙いとしか考えられません。

このように、両手取引を優先した「物件情報の囲い込み」は、売主様の早期売却・高値売却の可能性を大きく低下させることになります。

結果として値下げを余儀なくさせられるケースが後を立たないことから、不動産会社選びはくれぐれも慎重にされることをオススメいたします。

ただ、一般の売主様は不動産会社選びを慎重にしたつもりでしょう。なのに任せた不動産会社がちゃんと売却活動しているか分かりません。

もう一度お伝えしますが、「大手だから安心」 「CMを見たことがあるから信頼できる」 「大手だから騙すわけがない」 といった不確かな理由で不動産会社を選んではいけません。
このような状態があまりに酷く、とうとう国土交通省もレインズの運用改定して、この売主の利益を保護するために動きました。

レインズ登録制度改定(平成25年10月1日改訂)について

東日本不動産流通機構では、レインズ登録制度が形骸化することを防ぐために利用規程を改訂し、平成25年10月1日に施行しました。 
やっと東日本不動産流通機構も「物件情報の囲い込み」について指導や処分規定の厳格化など図られることとなりました。 

詳細は ⇒ レインズへの登録制度 

しかし、それでも一向に無くならないのが「物件情報の囲い込み」なのです。
びっくりしますが、不動産業者は自身の利益を守るための知恵ならどんなことでも思いつくみたいです。
2017年度の「不動産仲介事業者大手各社の取扱高等の推移」というデータが発表されましたが、全くこの両手仲介は少なくなっておらず、「物件情報の囲い込み」は更に巧妙に形を変え横行しているのです。

解決には、専任媒介から一般媒介への変更

私たちは、この「物件情報の囲い込み」にどう対処すべきでしょう?
対処しないと、私たちの得るべき利益が逸失し、不動産業者に搾取されてしまいます。

具体的に出来る方法と言えば、素人の私たちに出来ることなど限られてしまいます。
ただ、ここで理解しておきたいのは、私たちは一般消費者だという事です。

従って、素人という立場、一般消費者という立場を利用し、囲い込みをする不動産会社に対処すればいいのです。

ただ、今現在、専任媒介契約(専属専任媒介契約)で一社のみに売却活動を依頼していて依頼後3ケ月目の場合で動きのない場合では、その売却を止めてしまうことは勇気がいるものです。

断る勇気375

大手不動産業者との専任媒介契約(専属専任媒介契約)の場合は止めてしまうことは特に勇気がいることでしょう。
この場合、今任せている不動産業者に一般媒介契約への変更を申し出をすることは出来るのではないでしょうか。
動きが無い状況の場合、申出を受けた不動産業者も一般媒介契約への変更はやむを得ないと考えています。
一定の期間売却活動に動きが無い場合の対処策として一度売却活動を見直すことは必要なことです。

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