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【抵当権とは】抵当権の意味とリスク回避方法をやさしく解説

更新日2020-10-01 (木) 21:38:20 公開日2020年4月12日

住宅ローンを利用して不動産を購入する時についてくるのが抵当権ですが、この記事では抵当権の意味やリスク、抵当権を抹消する方法などを解説していきます。


★目 次★【抵当権とは】抵当権の意味とリスク回避方法をやさしく解説


抵当権とは

そもそも「抵当権」とはなんなんでしょう。分かっていそうで実は詳しく理解している方も多くないような気がします。
「抵当権」とは、金融機関から住宅ローンの借り入れなどを行う際に、万が一、ローンの返済ができなくなった時のために金融機関や保証会社が抵当権者となって不動産を担保に取る権利のことを言います。
簡単に言うと、「お金を貸してあげるけど、返済できなくなったらあなたの不動産を処分(競売)して売買代金からお金を回収しますよ」という権利を金融機関(保証会社)が有していることです。

※補足
住宅を購入するにあたり、金融機関の住宅ローンを利用して購入する方が圧倒的に多く、抵当権が付されることは一般的な事です。
抵当権が設定されても、お金を借り入れた本人は担保となった不動産を明け渡す必要はなく、これまで通り使用し続けることが可能です。あくまでも「住宅ローンの返済が滞った場合」に、金融機関が抵当権を行使してその売買代金から貸したお金を回収することになります。また、1回返済が遅れただけで抵当権を行使されることもありませんのでご安心ください。


【登場人物の整理】

ここでは抵当権に関して登場してくる人物を整理しておきましょう。
先ほど「抵当権者」という単語がでてきましたが、基本的には「抵当権者」と「抵当権設定者」の二者、場合によっては「物上保証人(担保提供者)」「連帯保証人」「連帯債務者」などが登場してきます。
超簡単に言うと、

「抵当権者」=銀行(保証会社)などのお金を貸す人。

「抵当権設定者」=お金を借りる人(不動産登記簿では債務者と表記されます)。

「物上保証人」=お金は借りる当事者ではないけど、抵当物件の所有権を有している人。

「連帯保証人」=お金を借りている人が返済できなくなった場合に、代わりに支払なければならない人。

「連帯債務者」=主債務者と共同でローンを返済していく人。連帯保証人は債務者が返済できなくなった時に代わりに返済を求められますが、連帯債務者は最初から返済義務を負っています。
というかんじです。

「抵当権者」と「抵当権設定者」はなんとなくどちらも同じような感じがしますが、先述のようにこの二者は相対する者となります。どっちがお金を貸す方?お金を借りる方?とちょっと話がこんがらがってきそうなので、
「抵当権設定者」は「債務者」と記載していきます。

抵当権と根抵当権の違い

不動産登記簿でたまに「根抵当権」がつている物件をみかけます。ここでは抵当権と根抵当権の違いをお伝えしていきます。
抵当権は、不動産に抵当権を設定してお金を借りて、全額返済すれば抵当権は消滅します。(※不動産登記簿に記載されている抵当権は自動的には抹消されません。抵当権抹消登記が必要になります。後記:抵当権抹消登記を行わないと生じる不具合)
一方、根抵当権は一度その権利を設定したら担保価値をもとに算出した極度額(貸し出せる限度額)の範囲内で何度でもお金の貸し借りができます。また、当事者の合意がない限り根抵当権は消滅しません。
※登記簿上の表記の違い
不動産登記簿謄本に記載される抵当権と根抵当権では用語も違ってきます。

「抵当権者」 → 「根抵当権者」

「債権額」 → 「極度額」

※余談
根抵当権は、企業や個人事業主が融資を受けたり、その方達が所有する不動産に設定したりするケースが多いため、一般消費者が住宅ローンを利用する際にはほとんど「抵当権」が設定されますが、某ス○ガ銀行は住宅ローンに「根抵当権」を設定していましたね。金融庁から行政処分を受けてからはどうなったかは分かりませんが、以前は都市銀行などで住宅ローンが借りれない自営業者の方などに積極的に無茶な住宅ローン融資を行っていた銀行なので、他の金融機関では借入できない方の弱みに付け込んで「根抵当権」を当たり前のように設定しておりました。


「根抵当権のメリット・デメリット」

一般の方にはあまり縁がない根抵当権ですので、簡単に根抵当権のメリット・デメリットをお伝えしておきます。

メリット

極度額以内で何度でも借入・返済を繰り返すことができる。教育資金や入院などの急な出費が必要な時に借り入れができる。

デメリット

抵当権の場合は、ローンを全額返済すれば抵当権は消滅するが、根抵当権はローン残高が0円(借入を全額返済しても)になっても消滅しない。根抵当権の消滅には当事者の契約解除の合意が必要なため、手続きが複雑。万が一、根抵当権者(金融機関)の契約解除に応じてくれなければ、不動産を売却することが実質不可能。

抵当権抹消登記を行わないと生じる不具合

先にお伝えしましたようにローンを全額返済が完了した時点で抵当権の効力は消滅します。しかし、抵当権は自動的には抹消されません。
「登場人物の整理」の用語にもでてきましたように、「抵当権設定者=債務者(お金を借りた人)」なのです。ローンを借りた当初に抵当権を設定したのは金融機関ではなくお金を借りた債務者なので、それを解除(抹消)するのも債務者の役目となります。金融機関が抵当権抹消登記を行うことはありませんのでご注意ください。
では、ローンを完済し終わっても抵当権抹消登記を行わなかった場合にどのような不具合が生じていくかお伝えします。

・不動産を売却する時に抵当権を抹消してからでないと売却することができません。

・相続の際にも抵当権を抹消しておく必要があります。債務者が亡くなってしまった後に抵当権抹消登記を行おうとすると手間も時間も要してしまいます。

・増築やリフォーム工事を行うために住宅ローンを借りようとするときに抵当権がついたままだと審査に通らない可能性があります。

・抵当権抹消登記に必要な書類は金融機関から発行されますが、長年放置していると、金融機関の名称や代表者氏名などが変わる可能性があり、発行された書類が使えなくなる可能性があります。

ローンの全額返済が完了していれば、抵当権を行使(競売など)されるリスクはありませんが、折角何十年も頑張って返済した住宅ローンですから、後々のトラブルを避けるためにも、完済し終わって一安心する前に抵当権抹消登記を行ってしまいましょう。

抵当権抹消登記の手続き

住宅ローンを完済すると金融機関から抵当権抹消に必要な書類が送られてきます。送られてくる書類は、抵当権解除証書または弁済証書・登記済証(登記識別情報通知)・代表者事項証明書または登記事項証明書・委任状などです。

抵当権抹消登記にかかる費用は、登録免許税が不動産1つにつき1000円、土地・建物とそれぞれに抵当権が設定されていれば登録免許税は2000円となります。あと、司法書士に登記を依頼する場合は、別途司法書士報酬が1万円前後必要となります。

登記の手続きはあまりなじみのないことだと思いますが、昨今の情報化社会では、簡単に手続き方法や申請書フォーマットなどを入手することができます。
法務局のホームページに必要書類・書類の記入方法などが掲載されていますので、是非ご自身でやってみることをお勧めいたします。
ホームページに掲載されている記入例をもとに申請書を作成し、印鑑をもって法務局に提出に行けば抵当権抹消登記の申請は完了です。およそ10日~2週間程度で、不動産登記簿謄本から抵当権が抹消されます。

抵当権が設定されている物件の売買

不動産売買において、抵当権が付いている物件(抵当物件)なんてザラにあります。多くの方が住宅ローンを利用して不動産を購入しており、なんらかの事情で売却しなくてはならなくなった場合に、住宅ローンを完済している方の方が珍しいです。なかには、繰り上げ返済を頑張って完済している方や、ローンを利用しないで現金で購入されている方もいますが、市場で販売されている中古物件の多くが抵当物件であるといっても過言ではありません。

さて、このような物件を購入する時の注意点は「所有権を移転する前までに必ず抵当権を抹消してもらう」ということです。

例えばB銀行の抵当権が設定されている売主Aさんのマンションを購入した場合、抵当権の抹消をせずに所有権移転(買受け)してしまうと、万が一Aさんが住宅ローンを返済しないとB銀行が抵当権を行使してしまいます。あなたは、自分のマンションになったにもかかわらず、あなたの合意なしに銀行に競売にかけられてしまい第三者のものになってしまう可能性があります。

不動産仲介会社が間に入って売買契約を締結する場合は、このような問題が発生しないように手続きを行っていきますので、抵当物件だからといってあまり心配する必要はありません。

しかし、不動産仲介会社を介さないで個人間売買・親族間売買などを行う場合は、必ず抵当権を抹消するよう売主に求めることが必要です。万が一にも抵当権がついている物件をそのまま買受けてしまうと必ずトラブルが生じます。

個人間売買や親族間売買を行うときでも不動産仲介会社に売買契約のサポートを依頼することが重要となってきます。

抵当権が行使されると

月々の住宅ローンの支払いが滞ってくると、最終的には抵当権が行使され自宅が「競売(けいばい)」にかけられます。裁判所を通して強制的に自宅を売却し、金融機関は売却額から貸したお金を回収します。
また、競売で落札されると直ちに強制立ち退きとなり住んでいる家を取り上げられてしまします。
抵当権の行使により競売が実行されるまでにはいくつかの段階がありますので、滞納→即競売ということにはなりません。次の章ではどのような段階を踏んでいくかを解説していきます。

競売が実行されるまでの流れ

1.住宅ローンの返済が滞ると金融機関から督促状が届きます。

この段階でやることは、可能であれば住宅ローンの返済を行ってください。
また支払いができないからと言って督促状を無視してはいけません。ローンの返済を滞る方には何らかの事情があり、故意的にローンの返済をしないという人はいないと思います。だからと言って督促状を無視していても事態は悪化するばかりです。金融機関に相談して、ローンの返済期間を延ばすなどして返済額の軽減に応じてもらうなどの対応をしてもらうことが大事です。どうしても返済できない場合は、自宅を売却せざる得ない状況になるかもしれませんが、何も手を打たなければ、行きつく先は競売となります。

2.期限の利益の喪失予告通知が届く

ローン返済を滞納してから3~6カ月ほど経過すると、金融機関からから期限の利益の喪失予告通知が届きます。指定日までに未入金と遅延損害金を支払わなければ、ローンを分割返済できる権利(期限の利益)を喪失させるという内容が書かれています。要は、「当初30年ローンで組んでいたものを、月々のローン返済という約束を守ってくれなかったので、このままだと30年かけて支払う権利を失いますよ」という通知です。

3.期限の利益の喪失通知が届く

期限の利益の喪失予告通知に記載されていた指定日が、ローンを滞納したまま過ぎると、ローン会社から期限の利益の喪失通知が届きます。30年かけてローンを分割返済できる権利(期限の利益)を喪失したため、指定日までに残債務を一括返済するようにという内容が書かれています。

4.保証会社による代位弁済が行われます。

多くの金融機関は住宅ローンに保証人を付ける代わりに保証会社を利用することが一般的です。代位弁済とは、保証会社が支払い不能となった債務者のローンを一括して金融機関に返済することです。期限の利益の喪失後、金融機関から一括返済を求められても返済することができなかった場合は、保証会社が金融機関に残債を払ってくれます。
一見すると、保証会社がローンを肩代わりして金融機関に返済してくれたように見えますが、保証会社は「あなたの代わりに銀行にローンを返済しました」ので「肩代わりした借金を一括で払え」とローンを肩代わりした通知(代位弁済通知)と、ローン残高・遅延損害金の支払い請求を債務者に行います。

5.保証会社による財産差し押さえ

債務者が保証会社に一括返済できない場合、保証会社は、財産の差し押さえ手続きをとります。こうして強制的に債務者の財産を取り上げ、債権の回収を行うのです。差し押さえの対象は、現金や銀行預金、不動産、保険の解約返戻金、手取り給与の4分の1まで、とあらゆる財産が対象となります。
差し押さえは裁判所に申し立てて行う手続きとなりますので、もし給与の差し押さえが行われれば、裁判所から勤務先にもその通知が入ります。これは債務者にとっては社会的信用を失うというかなりのダメージとなります。

6.競売が実行される

保証会社からの一括返済に応じられない場合は、保証会社は裁判所を介し強制的に住宅を競売にかけることができます。そして、売却した代金からローンの返済を行うことになります。

競売のデメリット

そもそも債務者の意思とは関係なく進められていく行為なので、債務者の希望や事情などは一切勘案されず、債務者にとってはデメリットしかありません。

①住んでいる家を追い出される

住宅の落札後は不法入居者として立ち退きを命じられ、それでも居座った場合には強制退去させられます。

②売買価格が市場の価格の3割~7割程度

競売物件は、落札者が一括で代金を支払わねばならないなどの制約があるため、また落札者は安く購入できることから競売物件を購入するため、売却価格は市場価格の3~7割程度になることが多いです。

③引っ越し費用などがでない

債務者は安く買われた上に、引っ越し費用なども自分で捻出しなければなりません。

④買い手を選べない

先ほど述べた通り債務者の都合や希望は一切勘案されず、一番高値をつけた相手を買い手(落札者)とするため、買い手を自由に選ぶことができません。

⑤官報に住宅の情報が載る

国が発行する官報という紙面に、競売にかけられる住宅の情報(住所・室内写真など)が掲載され、自宅が競売にかかっていることを周囲に知られてしまう可能性がある。

⑥売却してもなお残債があれば払い続けなければならない

競売によっても不動産が落札されてもすべてが終わるわけではありません。売却代金で借金全額を返済できなかった場合、残りの債務も支払い続けなければなりません。
このように、住む家が亡くなった上に、ローンの支払いまでも残った状態になる可能性があり、競売はデメリットしかないという事です。

競売リスクを回避するために

競売に陥ってしまった人は、会社から解雇されて安定収入がなくなった、病気を患い働けなくなった、もしくは購入当初から身の丈以上の物件を買ってしまった、などの様々な要因があるはずです。
これから、住宅を購入する方がとるべきリスクマネージメントとしては、

①無茶な購入はしない

金融機関の審査では年収に対しての返済比率が35%~40%程度に設定されていますが、実質の年収に対しての返済比率は25%程度の納めておくのがよいでしょう。また、物件価格に加えて諸費用ローンを利用してまで購入することもお勧めできません。

②団体信用生命保険+アルファの加入を検討する

万が一の病気やケガで住宅ローンの返済が困難になった場合に備えて、疾病補償などを住宅ローンにつけておく。今は元気でも住宅ローンの返済期間は30年近くに及びます。もしもの時でも、住宅ローンの返済を補える補償をつけておきましょう。今はほとんどの金融機関が豊富な保険商品を取り揃えております。

③ボーナス併用の支払いは利用しない

会社員の場合、企業の業績により収入が減ることも想定されますが、恐らくボーナスの支給額から減っていくと思います。なので、月々の返済額で賄えるような住宅ローンの組み立てを行っておくのが良いでしょう。

④完済年齢を検討する

多くの金融機関では、80歳になるまでに完済してくださいとなっております。
44歳の人が35年の住宅ローンを組めてしまうということです・・・。
はたして80歳までローンを払い続けることは可能なのでしょうか。考えただけでゾッとします。
企業の雇用年齢が伸びてきたとはいえ、せめて70歳くらいまでに完済できるような借入期間にしておきたいものです。

既に住宅を購入してローンを返済している方のリスクマネージメントとしては、

①当たり前ですが、月々の返済をしっかり行う。

②自宅の売却相場を常に把握しておく

③住宅ローンの残債を自宅売却相場以内に減らしておく

④借りてる住宅ローンの金利が高ければ借り換えを行う

まとめ

抵当権は住宅ローン借入とは切っても切れないものです。

抵当権が設定されているからといって、住む権利がないとか、売却できないとかといことはありませんので、変に怖がることはありません。

ただ、住宅ローンの返済を滞ると、それが抵当権行使の第一歩となる可能性があります。抵当権行使の先に行きつくのが競売です。

住宅ローンの返済が滞ってくると、返済ができない負い目から気持ちが逃げてしまします。

しかし逃げてはいけません。逃げていても事態が好転することはなく行きつく先は分かり切っています。
逃げずに早いうちに対応していれば選択肢は多く残されています。お金を貸している金融機関も安くしか売れなく、手間のかかる競売を望んでいるわけではありません。

結果として自宅を手放さなければならないことになるかもしれません。しかし対策が早ければダメージも少なくなるのではないでしょうか。

弊社YUIKAには、裁判所から「競売開始決定」の通知が届いたけどどうすればいいの?という問い合わせが増えております。
この段階ではできることは少ないですが、できる限りの提案はしております。
しかし私たちの本音では「何でもっと早く相談しないの」と。

この記事を読んでいる方で、住宅ローンで困っている方、困りそうな予兆のある方、手遅れになる前に動いてくださいね。

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