特例制度(住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税)をご存知ですか?
更新日2020-07-11 (土) 22:14:14 公開日2019年11月9日
★目 次★
「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」という特例制度をご存知でしょうか。
この制度について、国税庁のウェブサイトでは次の説明があります。
平成27年1月1日から平成33年(2021年)12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。
国税庁:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税より
これを簡単に言うと、一般的には「父母または祖父母から援助(贈与)してもらった場合は、贈与税が発生する」が、「父母または祖父母から受けた贈与を資金としてマイホームを取得する等した場合は、本来発生する贈与税が法律で定められた一定額まで非課税になる」という制度です。
※配偶者の父母や祖父母は認められません。
※純粋な新築だけではなく、新築のための土地の取得や増改築も含まれます。
※対象となる住宅用の家屋は日本国内にあるものに限られます。
ここでは、この制度の内容、非課税額、特例を受けられるかどうかのチェックなどについて解説します。
一定額とは?どのくらい非課税になる?
特例の非課税限度額は次の事項により異なります。
①契約締結日(家屋を建築するための請負契約等の契約締結日)
②家屋の種類が省エネ住宅(省エネ等基準に適合することを証明された住宅)かどうか
③消費税率(家屋の新築等に係る対価額の消費税率)
上記3つの事項に従って次の表をご確認ください。
(イ)は消費税が8%の期間中の非課税限度額
(ロ)は消費税が10%の期間中の非課税限度額
(例)契約締結日が平成31年11月1日の場合、消費税は10%になりますので
(ロ)の「平成31年4月1日から令和2年3月31日」に該当します。
・省エネ等住宅に該当する場合:3,000万円
・それ以外の場合:2,500万円まで非課税になります。
更に、この特例と贈与税の基礎控除「年間110万の生前贈与の非課税」を追加できますので、実際は
・省エネ等住宅に該当する場合:3,110万円
・それ以外の場合:2,610万円まで非課税になります。
特例の適用を受けられる人の要件(非課税の特例の対象)
次の要件の全てを満たす受贈者が非課税の特例の対象となります。
1.贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(子供や孫)であること。
直系:血のつながりがある縦のラインの親族 卑属:自分よりも下の世代
配偶者の父母(又は祖父母)は直系尊属には該当しませんが、養子縁組をしている場合は直系尊属に該当します。
2.贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること。
3.贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること。
4.平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと
(一定の場合を除きます。)
5.自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、又はこれらの方との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではないこと。
6.贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。
(注)受贈者が「住宅用の家屋」を所有する(共有持分を有する場合も含まれます)ことにならない場合は、この特例の適用を受けることはできません。
7.贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること
8.贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。
(注)贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していないときは、この特例の適用を受けることはできませんので、修正申告が必要となります。
国税庁:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税より抜粋
特例の適用を受けられるかどうかをチェックする方法
国税庁発行の公式チェックシートをご紹介します。
「はい・いいえ」で回答するだけで、適用になるかどうかのチェックができます。
また、申告する人の添付書類をチェックをすることも可能です。
(新築又は取得用)と(増改築等用)がありますので、それぞれご確認ください・
平成29年分「住宅取得等資金の非課税」のチェックシート(新築又は取得用)
平成29年分「住宅取得等資金の非課税」のチェックシート(増改築等用)
注意点
この制度は非常に良い制度です。
将来の相続税の対策や頭金にもなります。
機会があればどんどん使っていただくことをお勧めします。
ただし、注意しなければいけない点があります。
注意点1(贈与税の申告)
トラブルが多いのは贈与税の申告です。
贈与税の申告は必ず必要です。
例えば、2,610万円まで非課税、2,500万円贈与の場合
2,610万円までは税金がかからないから申告は必要ないと考える人が多くいらっしゃいます。
2,500万円は確かに非課税の枠内ですが、これは申告をした場合に非課税となることであり、申告しなければ通常の2,500万円受け取ったときの贈与となり、贈与税の基礎控除である年間110万円までしか非課税になりません。
また、税金の申告は基本的に期限内に行う必要がありますが、仮に期限が遅れても遅れた分の利息を払えば認めてもらえるケースがあります。
ただ、この制度はとても厳しく、1日でも遅れると認められません。
申告は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に納税地の所轄税務署で行います。
必要書類は次の通りです。
・贈与税の申告書(特例の適用を受ける旨を記載のこと)
・戸籍謄本
・登記事項証明書
・新築や取得の契約書の写し
期限を過ぎるとこの特例が受けれらないため、多額の贈与税が追徴課税されることもありますので、くれぐれも注意してください。
注意点2(受け取れる金額)
非課税枠が2,500万円の場合、父親から2,500万円、母親から2,500万円というのはNGです。
1,250万円ずつであれば問題ありません。
注意点3(贈与のタイミング)
贈与を受けるタイミングによっては、特例が適用されない場合があります。
たとえば次のようなタイミングです。
・贈与を受けた翌年の3月15日までに家屋が出来上がらない(工事が完了に準ずる状態にある場合を除く)
・贈与を受けた翌年の12月31日にまでに住んでいない
・住宅ローンの決済後に贈与を受けた(住宅ローンの返済に充てた場合は、特例の適用を受けられません。)
「小規模宅地等の特例」との関係
「小規模宅地等の特例」は、被相続人の自宅を相続した時に、配偶者、同居の親族、家を持っていない親族のいずれかに適用される特例です。
自宅の評価額を330㎡まで8割減できます。
しかし、配偶者が相続した場合は取得者ごとの要件はありませんが、他の親族は住宅を新築・取得してしまうと小規模宅地等の特例を受けられなくなります。
今回ご案内した「住宅取得資金の贈与税の非課税という特例」と「小規模宅地等の特例」のどちらが得になるかは慎重に検討する必要があります。
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