相続法改正のポイントまとめ!(いつから・何が・どうなる?!)
更新日2020-07-11 (土) 22:13:22 公開日2019年2月17日
2018年7月6日に、相続に関する規定を改正する法律が成立し、2018年7月13日に公布されました。
約40年ぶりの大きな見直しです。
今回の相続法の見直しは、高齢化社会の進展等に対応するものです。
何がどんなふうに変わったのか。
ここでは、相続法の6つの改正項目についてご案内しています。
1.配偶者の居住権保護の方策
2.遺産分割の見直し
3.遺言制度の見直し
4.遺留分制度の見直し
5.相続効力の見直し
6.相続人以外の貢献を考慮する方策
🌼1.配偶者の居住権保護の方策
死亡した方の相続財産の中に、夫婦で住んでいた自宅が含まれており、且つ相続開始後も、残された配偶者が住み続ける場合に、所有権とは別に残された配偶者にむけて「配偶者の居住権」という権利を認め、その権利を登記することが出来るようになりました。
今回の改正で配偶者(妻や夫)の居住権が強く保護されるようになります。
また、所有権と配偶者の居住権という2つの権利に考えることができるだめ、自宅というひとつの財産であっても、純粋な自宅の評価額よりも、評価額を下げることができます。
配偶者居住権は次の2つに分けられます。
▶短期居住権
✿短期居住権とは
たとえば、夫が死亡する前から夫名義の自宅に妻が無償で住み続けていた場合「遺産分割協議が終了するまで」もしくは「相続開始から6カ月まで」のいずれか遅い日までの間、妻は引き続き無償で住み続けることが出来るという権利です。
▶長期居住権
✿長期居住権とは
たとえば、自宅の居住権を「相続・遺贈・死因贈与」により妻が取得する際には、「数十年から妻が死亡するまで」の長期間にわたって居住権を認めるという権利です。
🌼2.遺産分割の見直し
✿遺産分割とは
相続する権利のある人が複数いる場合に、その人たちの間で遺産をわけることを言います。
遺産分割による見直しは大きく4つに分けられています。
①配偶者保護のための方策
②仮払い制度の創設・要件明確化
③一部分割
④遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲
▶①配偶者保護のための方策
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、自宅の贈与・遺贈が行われた場合、特別受益が適用されず、尚且つ、その自宅は遺産分割の対象にならないと改正されました。
✿特別受益とは
相続人が複数いる場合で、一部の相続人が、亡くなった人からの遺贈や贈与によって特別に受けた利益を言います。
▶②仮払い制度の創設・要件明確化
家庭裁判所の許可を得れば、遺産分割協議を終えてなくても、預貯金金額を引き出すことができるようになりました。
ただし、一定の上限額が設けられています。
『預貯金残高(相続開始時の預貯金債権額)×1/3×仮払いを求める相続人の法定相続分』
この式で計算した金額までは、家庭裁判所の許可を得ずとも各相続人が自由に引き出せます。
▶③一部分割
「全相続財産の遺産分割協議を終えてからでないと相続手続きを完了させることができない」といった思い込みによって、相続人の生活が逼迫してしまうケースがあとを絶たなかったため、「相続財産の一部のみを先に遺産分割協議にかけて良い」とする一部分割について明確に定義されるようになりました。
▶④遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲
遺産分割協議が終了しない間に、特定の相続人が自分の持分の一部を処分してしまったケースでは、「その処分した財産については、遺産分割協議の対象とする」と定義されました。
処分した人以外の共同相続人全員の同意があれば、処分された遺産も遺産分割の対象とし、処分で得た利益を、処分した人の相続分から差引くことできるということです。
処分した相続人の法定相続分が多くなってしまい、不公平が生じてしまうため、このように明文化されることになりました。
🌼3.遺言制度の見直し
遺言制度に関する見直しは大きく4つに分けられています。
①自筆証書遺言の方式緩和
②自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の創設
③遺贈の担保責任
④遺言執行者の権限明確化
▶①自筆証書遺言の方式緩和
現行:自筆証書遺言は財産目録も含めた全文を自筆で書かなければならない。
改正案:財産目録についてのみ自筆でなくても可能とする
▶②自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の創設
自筆証書遺言には公的期間で保管するようなシステムはないため自分で保管しなければなりません。
そのため相続人が遺言書の存在に気付かずに自分達で遺産分割協議を進めてしまうといったケースが多々問題視されていたことから法務局で保管システムを創設することになりました。
更に法務局で遺言書を保管すれば、保管時に検認手続きも同時に行ってくれますので、相続時に検認作業にかける時間を省略することができるようになります。
▶③遺贈の担保責任
遺言書によって、遺言者が特段の意思表示を行っていなければ、遺言執行者または法廷相続人は、遺贈を受ける受遺者に対し、遺贈財産を相続開始時の状態で引き渡す義務を負い、万が一、遺贈財産に欠陥が見つかった場合には法的責任を問うことが可能になりました。
▶④遺言執行者の権限明確化
現行:法律で明文化されていない
改正案:遺言執行者の権限を明確に
遺言執行者は遺言書に書かれている内容を実現させることが職務であるため、遺言書の意思を尊重し手続きをすすめなければなりませんが、現行では、その点が法律に明文化されていないことが問題視されていましたので現行の条文に文言を付け加えることで、その不十分さを補うことになりました。
🌼4.遺留分制度の見直し
▶遺留分の減殺請求方法
✿遺留分とは
残された家族への最低限の財産保証をいいます。
遺留分減殺請求(遺留分の返還をもとめる手続き)を行う際には、「原則、金銭によって支払いを請求すること」と明文化されました。
▶遺留分の侵害を受けている相続人の減殺請求手順
①相続によって取得した財産を保有する人に遺留分の減殺請求を行う
↓
それでも自らの遺留分に到達しない場合は
↓
②生前におこなわれた贈与によって取得した財産を保有する人に遺留分の減殺請求を行う
①②の順で請求を行うことになりました。
▶遺贈や贈与の時期
■遺贈や贈与が同時期に行われた場合
贈与財産の金額が大きい方優先
■遺贈や贈与が同時期ではない場合
相続開始直前に行われた贈与から遡ることになります。
▶遺留分の算出
遺留分を算出する際には、死亡した方の遺産に加えて、
相続人に対しては「相続開始10年以内」
相続人以外に対しては、「相続開始1年以内」
におこなわれた贈与のみ、基礎財産を含めることになり、死亡した方が残した負債を誰が負担したのかを考慮した上で、遺留分の計算をおこなうことになりました。
🌼5.相続効力の見直し
相続の効力に関する見直しは大きく3つに分けられます。
①相続による権利の継承に関する規律
②義務の承継に関する規律
③遺言執行者がある場合における相続人の行為の効果
▶①相続による権利の継承に関する規律
「不動産を相続する相続人が、自らの法定相続分を超えて相続する場合には、登記や登録などの対抗要件を備えなければ第三者へ対抗することが出来ない」とされました。
更に、法廷相続分を超えて預貯金を相続した相続人は、債務者である金融機関に対して、その趣旨を遺言書または遺産分割協議書によって提示することで「対抗要件を備えることが出来る」とも組み込まれました。
▶②義務の承継に関する規律
「原則、相続債権者は相続人に対して、法廷相続分に応じて債務返済を請求することができる」と明文化されました。
しかし、相続債権者が、指定相続分に応じて債務を返済するように申し出た場合には、それに従って債務返済に応じることになりました。
▶③遺言執行者がある場合における相続人の行為の効果
「遺言執行者が存在する場合には、相続財産の処分、その他相続人がした遺言の執行を妨げる行為は無効とする」と明記され、遺言執行者の権限がより明確化されることになりました。
更に、相続債権者を含む相続人の債権者が、債権回収のために財産を差し押さえたとしても、対抗関係が成立するとも明文化されました。
6.相続人以外の貢献を考慮する方策
死亡した方に対する相続人以外の方による貢献を認め、相続人に対して、金銭の支払いを請求できるようにしました。
▶貢献が認められるかどうかの基準
報酬が発生しない「無償性」
長年に渡って従事してきた「継続性」
片手間で行っていない「専従性」
を満たす必要があります。
🌼改正項目の施工期日
施工期日は、改正項目によって段階的になっています。
①原則
2019年7月1日施工
②自筆証書遺言の方式緩和
2019年1月13日施工
③配偶者の居住権を保護するための方策
2020年4月1日施工
④公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度
2020年7月10施工
今回の相続法改正により、今後の相続の進め方が大きく変化することになります。
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