配偶者居住権の背景&制度内容&注意点について確認しよう!
更新日2021-10-05 (火) 18:43:19 公開日2019年2月20日
相続法が大きく改正されましたね。
今回の相続法改正の中で、最も重要視されたのが、「配偶者の居住権(配偶者への優遇措置)」です。
配偶者居住権の施工日は2020年4月1日となります。
ここでは、創設にいたるまでの背景や、制度内容についてご案内します。
★目 次★
動画でも解説しています。
💛配偶者居住権とは
簡単に説明すると、相続が発生した時に、被相続人(亡くなった方)の所有する不動産の居住権を配偶者が獲得できるという権利です。
💛配偶者居住権の背景
80歳以上の人口が1.000万人を突破した現代では、亡くなる方はもちろん、亡くなった方の相続人となられる方も高齢となっており、配偶者の生活保障の必要性が高まってきています。
こういった時代背景にあわせ、高齢の配偶者が、老後も安心して過ごせるように今まで以上に手厚い保護を充実させるための配偶者居住権が創設されました。
💛配偶者居住権改正前
【例】被相続人(夫)の財産内訳
・自宅不動産(評価額4.000万円)
・預貯金(2.000万円)
・相続人3人(配偶者である妻・長男・長女)
法定相続分は、民法第九百条(法定相続分)により次の通りとなります。
子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は各二分の一とする。
必ず、法廷相続分で遺産の分割をしなければならないというわけではありません。
法定相続分は、相続税額を求めるときや、相続人同士の話し合いで合意した場合の法律上の目安となります。
▶配偶者の住む家がなくなる
法定相続分の妻3.000万円・長男1.500万円・長女1.500万円で分ける場合
このパターンで分ける場合、最悪、住み慣れた自宅を売却して現金にする必要がでてきます。
その結果、妻は住む家を失ってしまうのです。
「3.000万円受け取るから、それで賃貸契約をすればいい・・」
という意見もありますが、高齢者の一人暮らしは、さまざまな問題があり、貸主にとっては大きな懸念材料になるようです。
そのため、賃貸契約の入居審査に通らない可能性があるのです。
▶配偶者の今後生活する資金(現金)がなくなる
妻が自宅を相続し、子供が預貯金を相続する場合
相続財産の中に、自宅不動産が含まれている場合、子供と同居していない限り、妻が自宅不動産を相続するのが一般的だと思います。
ここで問題となっているのが、高齢の妻は、自宅を財産として受け取ったとしても、現金をまったく相続出来ないということです。
妻の今後の生活資金確保が難しくなり、大変な思いをする可能性があります。
また、自宅の評価額は4.000万円で、その自宅を妻が相続することによって、妻は法廷相続分(3.000万円)以上の財産を相続することになります。
そのため、子供たちの相続分は必然的に少なくなってしまいます。
「相続分が〇百万円くらい少なくなるのは仕方ない」と、子供たちが妥協してくれれば良いものの、中には1円単位できっちり相続しなければ気がすまないと反論される可能性もあります。
▶二世帯住宅に住めなくなる
子供世帯と二世帯住宅で同居している場合
夫名義の二世帯住宅を、「夫→妻→子供(二次相続)」ではなく、妻は相続せず「夫→子供」と相続させる場合があります。
その理由は、二次相続の場合二度手間になってしまうからです
夫名義の二世帯住宅を、一次相続で子供が相続した場合、夫が死亡してから妻が死亡するまでの間、妻は、子供が所有している自宅に住んでいるということになります。
二世帯住宅を建てる時、一般的には、親名義の土地にある既存の家を増改築することが多いと思いますが、夫婦で協力して気付き上げてきた自宅を、途中で子供へ渡してしまうことになるわけです
もちろん、親子中が良く、妻も子供も、すべてに承諾していれば何も問題はありません。
しかし、夫の相続手続きの最中に親子間でトラブルが発生したり、そもそも親子中があまり良くなかったりすると、所有権を主張する子供が親(妻)を追い出してしまうことも考えられるのです。
高齢の親がいたとしても、「自分の相続分を妥協できない」もしくは「二世帯住宅で同居する親を追い出してしまう」というのは、非現実的だと思われるかもしれませんが、家族中が希薄化している現代では、今までには考えられなかったような問題があとを絶たないというのが現実です。
💛配偶者居住権改正後
このように、高齢の配偶者が、「住む家がない」「今後の生活資金がない」というのは、大変な負担になることから、今回の改正で配偶者居住権が認められました。
これにより、妻は、4.000万円の自宅を居住権と所有権に分けて相続できるようになります。
◩4.000万円のうち、評価が2.000万円であれば、残りの2.000万円については、''所有権として子供2人がそれぞれ1.000万円ずつ相続''することになります。
◩所有権は子供であっても、妻は居住権を主張することができますので、夫が亡くなった後も、安心して自宅に住み続けることができます。
◩自宅というひとつの財産であっても、妻は、居住権2.000万円のみを相続することになりますので、相続財産評価額を下げることが出来ます。
◩自宅という一つの財産を、所有権と居住権に分けて相続することにより、自宅評価額の全額を相続することにはなりませんので、妻は自宅の他にも相続できる財産が増えることになります。
つまり、預貯金の2.000万円についても、半分の1.000万円を受け取ることができるのです。
これにより住み慣れた自宅も確保でき、生活資金も受け取れるということになります。
これがこの改正の最大のメリットです。
💛短期居住権と長期居住権
✿短期居住権とは
短期居住権は、文字通り、配偶者の居住権を短期的に保護するために設けられています。
夫が死亡する前から、夫名義の自宅に妻が無償で住んでいた場合に適用される権利です。
「遺産分割協議終了or相続開始6カ月」のいずれか遅い日までの間、引き続き無償で住むことが出来ます。
短期居住権を取得したあとに、長期居住権を取得することも可能ですが、その場合、短期居住権は消滅します。
✿長期居住権とは
自宅の居住権を相続・遺贈・死因贈与によって、妻が取得する場合は、「長期~妻が死亡するまで」自宅に住むことができるという権利です。
言いかえると、被相続人の配偶者は、自身が亡くなるまで居住権(無償で被相続人の住居に住むことができる)を認めるということになります。
長期居住権は、配偶者の生活保障として最も手厚い配偶者居住権です。
💛配偶者居住権の存続期間
原則:配偶者が亡くなるまで(終身)
例外:遺産分割又は遺言で別段の定めがある場合はそれによる
💛配偶者居住権の登記
配偶者が配偶者居住権を取得した場合は、登記をする必要があります。
登記しなければ配偶者居住権が無効になってしまいます。
💛配偶者居住権の注意点
①用法遵守義務
・基本的に家は居住用として使わなければならない
・事業用や倉庫としての使用は不可
②善管注意義務
・管理を徹底しておこなうこと
③譲渡禁止
配偶者居住権を他人に売ることはできないということです。
④所有者の承諾なき増改築または第三者による使用の禁止
⑤修繕または費用の負担が必要
基本的に、家を相続した子供は、住んでいないため、負担しなくて良いとされています。仮に雨漏りやお風呂の故障などは、住んでいる妻が、自分のお金で修繕するようにということです。
これらに違反した場合は、配偶者居住権が消滅することになりますので、注意が必要です。
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