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【相続の基本】相続分と遺留分、遺留分侵害額請求について

更新日2020-07-11 (土) 22:15:31 公開日2020年3月14日

ここでは、相続時によく聞く遺言と法定相続分、遺留分の関係って何?について解説しましょう。

この法定相続分、遺留分って言葉、聞いたことなかなかないと思います。

そこで本記事では、そもそも

・相続の基本はどうなっているの?

・相続分・遺留分とはなに?

・具体的な遺留分を教えて

・遺留分があるとき、どのようにすればいいの?

・遺留分が侵害されたとき、どのようにすればいいの?

について解説します。

これから相続が多くなりそうです。
ゆえに、相続の時の基本を理解するために、是非参考にしていただきたいと思います!

★目 次★【入門編】相続の基本・相続分と遺留分、遺留分侵害額請求について


相続と遺言

簡単に説明すると、家族が亡くなったときにその人の遺産を誰が受け継ぐかっていうのが相続で、その決まりが民法に書いてあるということです。
遺言というのは亡くなった人の生前の意思が書かれていて、これは民法で相続よりも優先されると定められていて、亡くなった人が遺言を書いていれば、優先的に実行されます。

では、「法定相続分」と「遺留分」ってなんですか?ということです。

法定相続分とは

遺産を誰がいくら相続するかについての目安は民法で定められています。民法で定められた相続分の目安を「法定相続分」と言います。
この規定はあくまで目安であるので、法定相続人全ての合意があればこの目安は無視することができます。
さらに、遺言書に相続割合の指定がある場合は、遺言書の内容が優先します。

遺留分とは

遺留分とは、民法で書いてある相続人が遺産をもらえたはずなのに、遺言書が有りもらえなかった場合、それを受け取ることができる最低限の取分(相続分)です。

具体的に遺留分について説明します。
下に行くに従って優先れます。

➀法律で定められた相続のルール  
   ↓
②それよりも優先されるのが遺言です。
(亡くなった人の意志が優先)
   ↓
③それよりも優先されるのが遺留分です。
(最低限の相続)

➀ < ②< ③ 優先されます。

例えば
旦那さんが亡くなりました。遺産は誰がもらうの?
・原則は、奥さんが1/2・お子さん(1人場合)1/2 遺言がなければ相続のルール①になります。
・旦那さんが、例えば遺言で「全財産は、弟にあげる」ってなったらどうなるかって言うと、相続の法律ルールよりも遺言②が優先されます。
・③遺留分とは、相続人に法律上保障された一定の割合の相続財産の事です。
本来相続できるはずだった、奥さん1/2・お子さん1/2の立場を守ってあげようというシステムです。

法定相続分・遺留分の見極め方

遺言書に相続割合の指定が有るか、無いかで法定相続分、遺留分のどちらになるかが決まります。

指定有の場合 → 遺留分
指定無しの場合 → 法定相続分

遺留分請求【遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)】

遺言などによって遺留分を侵害されたら、侵害者に遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)をすることが可能です。
民法により保護される奥さんとお子さんの遺留分を請求することです。

【例えば】
奥さんとお子さん(1人)の場合
本来相続できるはずだった
奥さん 1/2 ・ お子さん1/2は

遺留分を請求すれば本来もらえるはずだった
さらにその半分1/2×1/2=1/4を優先して取得できることになります。
この場合の遺留分の最低限もらえる割合が1/4です。

家族構成とか誰が亡くなったかによって、遺留分の最低割合が違ってきます。
家族構成が複雑に場合は、専門家に一度相談してみることをお勧めします。

どのように遺留分を請求していくのか?

遺留分の請求には決まりが有りますので、しっかり理解しておきましょう。
なお、遺留分の請求方法については、民法の改正により「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」として名前も制度内容も改められていますので、ご注意ください(2019年7月1日施行)。
また、2019年6月30日までの相続人には「遺留分減殺請求権」が認められます。

◎遺留分侵害額請求(旧・遺留分減殺請求)

遺留分侵害額請求ができる人は?
配偶者や子のような、兄弟姉妹以外の相続人です。
兄弟姉妹には遺留分を請求する権利はありません。

◎遺留分減殺請求が遺留分侵害額請求に改められた経緯として、
遺留分減殺請求は、遺留分を「お金」ではなく「遺産そのもの」を取り戻す手続きだった事でたびたびトラブルなど支障があったからです。この支障を解消する目的で法改正され、遺留分侵害額請求では遺留分は原則として「お金で取り戻す権利」に変わりました。
お金で精算すれば、1回で解決できるからです。

またこの改正により、もう一つ変更されたのが「遺留分請求の対象となる生前贈与の範囲」です。
「相続人の特別受益と評価される生前贈与」は遺留分請求の対象になりますが、法改正前は、相続人への特別受益の対象となる生前贈与に期間が設けられていませんでした。
今回の法改正後は相続開始前10年の生前贈与に限られることとなりました。
これにより、遺留分請求の対象となる生前贈与も、自然と「相続開始前10年間における生前贈与」に限られることとなります。


◎遺留分侵害額請求期限は?

遺留分は原則として、故人が死亡してから1年以内に請求をすることが無難です。
遺留分の請求は、侵害が有った事を知った日から1年間ですが、相続の開始や、単に遺産分割協議から1年間ではないので注意すべしです。
なお、相続があった日から10年で請求権は消滅します。

遺留分の請求期限が迫っている場合には、とりあえず「遺留分侵害額の意思表示」をしておくのが良いです。手紙・メール・FAX・口頭などでも構いません。争いになった時に、意思表示の有無を言ってくる場合があるからです。

◎相続する権利がなくなった相続人について

〇相続放棄
相続放棄した人とは、家庭裁判所において、相続放棄の申述をした人です。
但し、相続が発生する前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です。
許可制となっている理由は、放棄者の理解不足や、放棄者の意志に反して行われる可能性の防止です。
家庭裁判所では、放棄の合理性や放棄者の意思の確認をしっかり行います。

一方、相続発生後の相続放棄は、遺留分放棄書を作成すればよく自由にできてしまいます。
これが面倒な人は、遺産分割協議書にて意思表示する方法でも可能です。


〇相続人として廃除された人
・故人が生前に家庭裁判所に申立をして遺留分をなくす制度です。
 虐待・重大な侮辱・著しい非行があった場合に申立が可能です。


〇相続欠格
・相続欠格者とは、一定の事由があったために当然に相続権を失った人
故人を殺害しようとしたり、遺言書を偽造したような場合に相続人の資格が無くなります。

◎遺留分侵害額請求の進め方

①内容証明郵便で遺留分侵害の意思表示をする
・遺留分侵害額請求の相手方に対して,遺留分侵害額請求の通知する
 証拠にもなる「配達証明付きの内容証明郵便」で請求書を郵送しておく


②遺留分侵害額調停で請求する
・裁判以外での交渉が上手くいかなかった場合には,裁判手続を利用して遺留分侵害額請求を行う
・いきなり訴訟を提起するのではなく,まずは家庭裁判所で調停をしなければならないのが原則です。
「遺留分侵害額による物件返還調停」になります
・当事者の間に調停委員という仲裁者が間に入ることで、話し合いをする制度で、妥協案を調停委員が出すものです。


③遺留分侵害額請求訴訟をする
・内容証明や調停でも遺留分の返還に応じない場合は、被相続人の最後の所在地を管轄する地方裁判所か簡易裁判所に訴状を提出します。
・請求金額が140万円を超える場合は地方裁判所、140万円以下の場合は簡易裁判所に訴訟します。

◎遺留分侵害額調停に必要な費用

・収入印紙1200円分
・連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認)

◎遺留分侵害額調停に必要な書類

必要書類は各裁判所によって異なります。
申立てをする場合は、申立てする裁判所に確認してください。

・申立書及びその写し1通
・標準的な申立添付書類

戸籍関係
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・相続人全員の戸籍謄本

遺産関係
・遺留分減殺請求権を行使したことがわかる書面

◎訴訟に必要な費用

①郵便切手の予納
提起する裁判所によって違いがあるので、提起先の裁判所へ確認してください。

②訴訟費用
訴訟費用として遺留分の価額に応じて下記の額の収入印紙を購入、訴状に添付します。

請求する額手数料
100万円以下10万円ごとに1,000円
100万円を超え500万円以下20万円ごとに1,000円
500万円を超え1000万円以下50万円ごとに2,000円
1000万円を超え10億円以下100万円ごとに3,000円


まとめ

今回は、相続時の基本、法定相続分と最低限相続できる範囲としての遺留分があることを解説しました。
また、遺留分を侵害されたとき取り戻すため方法「遺留分侵害額請求」ついても見てきました。

遺留分の侵害が有り、実際にそれが認められる場合でも、何もしなければ遺留分の返還は受けることができません。
実際に支払いを受けるためには、期限内に家庭裁判所に遺留分侵害額請求し、相手と遺留分の返還についての交渉をしましょう。
話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所で遺留分侵害額の請求調停をします。
調停でも解決ができない場合には、遺留分減殺訴訟を地方裁判所か簡易裁判所へ訴訟するしかありません。

訴訟となれば自分一人で手続きを進めるのはかなり難しと思います。
まずは弁護士に相談すべきかもしれません。

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