【相続税】税務調査&質問内容・提出物・税務署の意図
更新日2020-07-11 (土) 22:11:18 公開日2019年3月27日
相続税は、被相続人(亡くなった方)の遺産(相続財産)を相続で受け継いだ場合や、遺言によって遺産を受け継いだ場合に、その遺産総額となる金額が大きいときにかかってきます。
この相続税は、税額が高額になる可能性が高いため、税務調査の対象になりやすいのです。
ここでは、税務調査の対象となった場合、調査当日に聞かれる内容や提出物、また税務署の意図などについてご案内します。
🏠相続税の申告・納税が終わった後の流れ
相続税の申告書を税務署へ提出すると、その情報は機械で読み込まれ、申告書に記載されている相続税の計算に間違いないか確認されます。
間違いがあった場合は、すぐに税務署から連絡が入ります。
この段階で何の不備もなければ、次の審査段階へと移り、ここで税務調査の対象になるかどうかが審議されます。
相続税の申告から期間が空いて(数年経過して)税務調査の連絡が入る場合があります。
その理由は、このような審議を慎重にすすめているためどうしても時間がかかってしまうからです。
🏠税務調査の対象となる可能性が高いケースと低いケース
▶税務調査の対象になる可能性が高いケース
相続税の減税措置である控除や特例を使うことによって、大幅に相続財産の評価額を下げることができます。
この控除や特例により、相続税が発生しなかった場合、税務調査の対象になる可能性が高くなります。
▶税務調査の対象になる可能性が低いケース
控除や特例を使わなくても、相続税が発生しないケースがあります。
それは、相続財産が基礎控除額に収まっている場合です。
相続財産が基礎控除額に収まっている場合は、税務調査の対象になる可能性は低くなります。
🏠税務調査の対象になりやすい人は…
▶相続税の納税義務がある人
ここでは、どういった方が、税務調査の対象になりやすいのかということについてご案内します。
まず税務調査の対象になる方は、大前提として「相続税の納税義務がある方」となります。
相続財産が高額な方が対象となる可能性が高いということです。
具体的な金額を上げると、遺産総額が3億円を超える方が亡くなった場合は、税務調査の対象になりやすいと言われています。
ちなみに全国の相続税申告の遺産総額の平均は2億5,000万円(相続税が発生したご家庭)と言われています。
相続財産が高額になれば、評価しなければいけない財産も増えるため、その分、評価額の計算も複雑になってきます。
そのため「納める相続税に間違いがあるのではないか?」と言った理由により税務調査の対象になりやすいのです。
仮に相続税の申告書などに不備がなかったとしても、遺産総額が3億円を超えた場合は、税務調査の対象になりやすい傾向にあります。
▶相続人名義の預貯金が多額にある場合
相続人ご自身が貯めたお金であれば、もちろん何の問題もありませんが、相続人が、専業主婦や学生、また収入に見合わない貯蓄があるあ場合は、「被相続人(亡くなった方)から贈与されていたのでは?!」という疑いがかけられます。
実際に被相続人から贈与があり、贈与税の非課税枠である年間110万円を超えているにも関わらず贈与税を納めていなければ、税務署から「贈与税を支払っていませんよね」と突っ込まれてしまいます。
また、相続開始3年以内に行われた贈与に関しては、全額が相続財産とみなされますので、相続税申告の際に申告していなければ未申告財産となってしまいます。
▶名ばかり贈与
名ばかり贈与といい、相続人名義の口座であるにも関わらず、被相続人が口座の管理をしていたとしたら、それは相続人の財産ではなく被相続人の財産とみなされてしまいます。
相続税の申告の際に、その口座の存在をあきらかにしておらず、未申告のままにしておくと、税務調査の際に未申告財産として追加課税されることになります。
さらに預貯金口座だけではなく、証券会社に相続人名義の口座があり、残高が多額にある場合も税務調査の対象になりやすいと言えます。
・本当に相続人が証券会社に口座開設したのか?
・学生である相続人が本当に株売買をしているのか?
・配当金が被相続人に振り込まれるようになっているのに相続人本人の口座といえるのか?
このようにさまざまな疑いがかけられるためです。
🏠税務調査で一番重視されるのは
税務調査で一番重視されるのは、他でもないお金の動きです。
税務署は簡単に被相続人や相続人のお金の動きを把握することが出来ます。
「このくらいばれないからいいだろう…」というような考え方は危険です。
🏠税務調査ではどんなことを質問されるのか
税務調査当日は午前10時頃に、事務所の調査員2名が被相続人が生前住んでいた自宅にやってきます。
午前中の調査については、世間話から始まり、被相続人や相続人へ向けた事細かな質問に多くの時間を費やします。
ここで、どのような質問がされるかと言うと
▶被相続人への質問内容
被相続人について次のような内容が事細かに質問されます。
・出生地
・趣味
・職歴
・取引のあった金融機関
・貸金庫の使用有無
・生前贈与の有無
・どのようになくなったのか
・亡くなる前後に入院や介護があったか
・相続財産をどうやって築き上げてきたのか
▶相続人への質問内容
相続人に質問される内容をざっとあげただけでも次のようにたくさんあります。
・職業
・現在の住まい
・税理士との関係
・取引のある金融機関
・相続税を納税した金融機関
・貸金庫の使用有無
・相続人の家の購入金額や売却金額
・相続人の家族構成(年齢・学校名・職業)
・被相続人の配偶者の財産状況
・財産管理は誰がおこなっていたのか
・相続開始直前で下した現金の具体的な使い道
・相続人の投資状況
▶税務署の意図
「なぜ、ここまで質問するのか...」と疑問に感じる方もいらっしゃると思いますが、税務署にはしっかりとした意図があります。
たとえば
・被相続人の趣味がゴルフなのに、ゴルフの会員権が相続財産に計上されていない
・被相続人の趣味が骨董品集めなのに、骨董品が相続財産に計上されていない
このようなことが発覚すれば、当然怪しまれます。#
また、専業主婦の妻が財産管理をおこなっている場合で、妻に多額の預貯金があれば、夫から渡された生活費の残りを貯蓄に回している(贈与されていた)とみなされ、相続財産に含まれてしまいます。
相続人の職業について質問するのは、相続人の年収を推定し、預貯金のバランスを見て、あまりにも預貯金残高が多ければ「被相続人から贈与を受けていたのではないか」と疑われます。
このように調査員が質問してくる内容には、すべて意図があります。
ここまでの内容で午前中の税務調査は終了します。
🏠現物確認
午前中の調査が終わると、調査員は外で休憩をとります。
仮に、調査員にお昼の準備をしていたとしても、必ず断られますので、準備する必要はありません。
午後の調査は13時頃から再開されます。
午後の調査ののメインは現物確認です。
他にも提出を求められるものはありますが、現物確認の中で、必ず提出を求められるのは、「通帳」と実印(銀行印)などの「ハンコ」です。
被相続人のものだけでなく、相続人のものも提出を求められます。
▶通帳提出の意図
通帳では、お金の動きを把握するとともに、次のような確認がおこなわれます。
■通帳に残されているメモ書きの確認
通帳にメモ書きを残している方は意外に多く、仮に通帳に「〇〇へ貸し付けた」というメモ書きが残されていたとして、その金額について、申告書に何も記載がなければ、のちに課税対象となる可能性もあります。
■名義預金ではないかの確認
名義預金と言って、なかみのお金は被相続人のものであるにも関わらず、口座名義だけを相続人(配偶者・子供・孫など)にしている場合、そのお金は相続財産とみなされます。
また、生活費の残りを専業主婦である妻が貯蓄したお金は、贈与契約書がなければ相続財産となります。
遠方に住んでいる相続人(子供や孫)名義の通帳が、被相続人の自宅にあったり、ハンコが被相続人と同じだったりすれば、名義預金の疑いがかけられてしまいます。
通帳の提出により、このような確認をしていきます。
▶ハンコ提出の意図
ハンコを提出すると、調査員は必ず印影を取ります。
印影を取るにも税務署における独自のルールがあります。
■ルール①朱肉をつけずに押す
その理由は、最近使ったかどうかを確認するためです。
朱肉をつけずにハンコを押したのに、ある程度文字がきれいに写し出されれば「最近何か重要な取り引きをしたのではないか?」と疑われてしまします。
■ルール②朱肉をつけて数回押す
その後は朱肉をつけて、しっかり印影を取ります。
1回の朱肉でどのくらい薄れるかも確認すると言われています。
🏠まとめ
もし税務調査の対象になった場合は、提出を求められたものを速やかに準備しましよう。
質問されたことについては、正直に答えることが大前提にありますが、余計なことまで話すと逆に怪しまれることもあります。
聞かれたことだけを正直に答える」というのがベストです。
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