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海外居住中、海外滞在中、海外赴任中に日本の不動産を売却する方法【税金編】

更新日2020-07-12 (日) 00:00:40 公開日2019年4月25日

海外滞在中に、日本にあるマイホーム、あるいは、相続により日本の不動産を所有することになった時、その不動産を売却することはできるのか?

不動産を売却することは可能です。
ただし、日本に居住している状態で不動産売却をする時と比べると、手続き、必要書類、税金面も、特有のものがあり、いろいろと煩雑になります。

税金

ここでは、海外滞在中(非居住者)の人が日本の不動産を売却する時の税金面についてご案内します。

国税庁のサイトです。参考にされてください。
(参考)国税庁:非居住者に対する課税

🌸居住者と非居住者について

はじめに、居住者と非居住者についてご案内します。

居住者と非居住者は所得税法で定められています。

✿所得税法(しょとくぜいほう)とは
所得税法(昭和40年3月31日法律第33号)は、広義の所得に対する税のうち、個人の所得に対する税金について定めた日本の法律です。

国税庁のサイトです。参考にされてください。
(参考)国税庁:No.2010 納税義務者となる個人

▶居住者

居住者は「永住者」と「非永住者」に分けられます。

「永住者」
国内に「住所(個人の生活の本拠)」を有し、又は現在まで引き続いて1年以上「居所(その人が現実に居住している場所)」を有する個人のうち、非永住者以外の個人

「非永住者」
居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人

▶非居住者

上記居住者以外の個人

非居住者の人は、日本国内で生じた国内源泉所得が課税対象になります。

国内源泉所得の範囲については、下記の国税庁サイトをご確認ください。
(参考)国税庁:国内源泉所得の範囲(平成29年分以降)

🌸所得税について。

税金

個人が土地建物を売り、利益がでた場合、譲渡所得となり、この譲渡所得に所得税と住民税の課税がされることになります。

✿譲渡所得とは
不動産を売って発生する所得(利益)を譲渡所得と呼びます。

譲渡所得の計算方法
譲渡所得=譲渡価格(売却代金)-取得費(買った時にかかった費用)-譲渡費用(売った時にかかった費用)

求めた譲渡所得がプラスであれば利益(譲渡益)が発生していることになりますので、税金の支払いが必要です。

日本に不動産(マンションや戸建て住宅など)をお持ちの非居住者(売主)が、日本国内の不動産を売却した場合もおなじです。
利益が出た場合(所得が発生した場合)は、たとえ売却時に、売主が海外滞在中(日本に居住していない)であったとしても、日本の所得税が課税されることになります。

所得税の課税漏れを防ぐために、売却代金を支払う側(買主)が、一定額を徴収して、税務署に前納するという源泉徴収の対象となる場合もあります。
源泉徴収については、次でご案内します。

🌸源泉徴収について

納税する一定の条件(売却代金が1億円を上回る場合)に該当する場合、売買価格の10.21%相当額を源泉徴収する義務が生じます。

非居住者の人が不動産を売却する場合の源泉徴収義務者は、売主(非居住者)ではなく買主(不動産の購入者)です。

源泉徴収した10.21%相当額については、買主が対価の支払をした翌月10日までに所轄の税務署、または、金融機関に納付することになります。

この期間内に納付しなかった場合、あとになって、突然、税務署から通知が届き、不納付加算税や延滞税まで支払うことになる可能性がありますので注意が必要です。

買主は、源泉徴収義務者ですので、買主が納付する金額を準備するのではなく、売主に支払う譲渡対価(売買代金)から、納付する所得税及び復興特別所得税を源泉徴収します。

買主が納付する際は、「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書」が必要になりますので、作成後納付を行います。
この支払調書については後ほどご案内します。

▶注意点

■住宅ローンの支払い
売主に支払われる源泉徴収後の金額は、支払金額の89.79%相当額しかありません。
ここで注意しなければならないことは、もし、売主に住宅ローンの支払いが残っていて、不動産を売却した代金でローンの返済をしようと考えている場合は、10.21%相当分が不足してしまう可能性があることです。

■譲渡対価(売買代金)と譲渡所得の違い

不動産の譲渡対価(売買代金)と譲渡所得は異なります。

✿譲渡対価(売買代金)とは
不動産を売却したことで得た総収入金額

✿譲渡所得とは
「譲渡対価-(取得費+譲渡費用)-特別控除」で求められた金額

源泉徴収が必要か不要かの判定では、譲渡対価(売買代金)が基準になります。

もし、1億円以上の売買になる場合は、税理士などの専門家に相談されることをおすすめします。

▶源泉徴収が不要となる条件

①買主が個人
②買主本人、または、その親族の居住が目的である
③不動産の譲渡対価(売買代金)が1億円以下

上記3つの条件がすべて揃っている場合は、源泉徴収を行う必要はありません。
ただし、確定申告は行う必要があります。

🌸支払調書

源泉徴収の納付完了後、買主から売主に支払調書を発行します。
これは「非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書」と言われるものです。

国税庁のサイトです。参考にされてください。
(参考)国税庁:[手続名]非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書(同合計表)

売主が、確定申告を行うときは、この「非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書」が必要です。

🌸確定申告

②確定申告

▶提出先・納税先

不動産を売却して所得を得た場合は、課税対象となりますので、確定申告の提出も納税も日本の税務署で行う必要があります。

▶還付申告

確定申告を行うことで、源泉徴収をされた税金が精算されます。
源泉徴収をされた税額が、その年の税額よりも多い場合は、差額を還付申告することができます。

▶税金の計算方法

税金の計算方法は、非居住者の人も、居住者の人と同様の方法で税額を計算します。

画像の説明
くわしくはこちら「不動産売却の各税金について」をご確認ください。

▶住民税

住民税は、1月1日時点で市区町村に住所がある方が課税をされますので、非居住者の方で1月1日に住所がない方は、住民税は非課税となります。

▶納税管理人

非居住者の人が、確定申告を行う場合は、非居住者の人が、確定申告書の提出や納税などを直接おこなうことができないため、納税管理人(海外居住者に代わって確定申告書の提出や税金の納付などをする者)を定める必要があります。

納税管理人を選任する場合は、非居住者の人の納税地を所轄する税務署長に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出する手続きが必要です。

海外では電子申告の「e-Tax」は使えません。
そのため、納税管理人が、自分で「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を作成して提出することになります。

納税管理人は、法人、個人のどちらでも良いのですが、一般的には親族に依頼されるケースが多いようです。
ちなみに、納税管理人を税理士に依頼することも可能ですが、その場合は、別途料金が必要になります。

🌸まとめ

今回ご案内したように、もし、「買主が納税しなかった、売主が確定申告をしなかった」、いずれの場合も、違法行為となりますので、くれぐれも漏れがないように注意が必要です。

不動産売却の他に、非居住者が、日本国内の不動産を賃貸に出すという方法もありますが、賃貸の運用は容易ではありません。
そのため、やはり、不動産を売却されるケースがほとんどです。

不動産を売却されるときは、信頼できる不動産業者、税理士や司法書士の専門家を探し、早めに相談されることをおすすめします。

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