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離婚の原因の1つ「悪意の遺棄」とは?

更新日2020-08-31 (月) 14:27:16 公開日2020年3月14日

「悪意の遺棄」という言葉をご存知ですか?
「悪意の遺棄」は法律で離婚が許される理由の1つ!
さっそく詳しく見てみましょう!

生活費

みなさんは「悪意の遺棄(あくいのいき)」という言葉をご存知でしょうか?

「悪意の遺棄」は、法律で離婚が許される理由の1つであり法定離婚事由になりますので、配偶者に悪意で遺棄された場合には、離婚訴訟を起こして離婚を認めてもらうことが可能になります。

✿悪意とは
夫婦の婚姻が破たんしてもかまわないという意志(うまくいかないようにする意志やその結果)をいいます。
「夫婦の婚姻が破たんすることが分かっているのに」ということです。
✿遺棄とは
正当な理由も無く、一定期間、夫婦間の義務である「同居義務・協力義務・扶助義務」を果たさないことをいいます。
簡単に言ってしまえば、配偶者の生活を見捨てるという意味になります。

悪意の遺棄は、配偶者が明確な理由を持たず「夫婦の同居生活を拒否する、協力的ではない」などの違反する行為です。
ちなみに、ここでいう「悪意」とは、法律用語となりますので、一般的な用語としての悪意(誰かに対する害意)とは意味が異なり、多くの場合「ある事実について知っている」という意味です。
これに対し「ある事実について知らない」ことは善意と言います。

ここでは、離婚の理由として認めてもらえる「悪意の遺棄」についてご案内します。


★目 次★


「悪意の遺棄」とは具体的にどんな行為なのか

次のような行為がある場合は「悪意の遺棄」と評価されます。

正当な理由も無く同居することを拒否

同居を拒否したり、実家に里帰りしたまま夫婦の居宅に返ってこないというケースです。

生活費を配偶者に一切渡さない

これは典型的な悪意の遺棄のパターンです。
同居・別居・単身赴任の夫が生活費を送らない場合も「悪意の遺棄」となり得ます。

健康で働けるにも関わらず働かない

就労意志もない、家事もしないなど、労働をせずに生活費を入れないというケースです。

配偶者を家から追い出す(帰宅させないようにしむける)

相手に暴力を振るったり、脅すなどして夫婦の家から追い出すケースです。

家でを繰り返す

理由もなく家出をしたり、家出を何度も繰り返すというケースです。

浮気相手の家で生活する

夫婦の家を出て、浮気相手の家で生活するというケースです。

夫婦間の3つの義務があるから「悪意の遺棄」が成立する

夫婦間で悪意の遺棄が成立するのは、前提に夫婦間の義務(同居義務・協力義務・
扶養義務)があるためです。
この夫婦間の義務は民法752条で規定されています。
言いかえれば、悪意の遺棄は、「同居義務」「協力義務」「扶養義務」に違反する
行為ということです。

Q  (1)

画像の説明

同居義務

夫婦は一緒に住まなければならないという義務があります。
正当な理由がない状態で一方的に同居の拒絶をすると同居義務違反に該当し悪意の遺棄とみなされることがあります。

ただし次のような場合は強制的に同居させられたり、違法と評価されたりすることはありません。
・転勤など、お互いの仕事によって同居できない
・親の介護のために別居している

また、次のように同居を拒絶するだけの理由があり別居している場合は悪意の遺棄にはなりません。
・暴力や暴言を配偶者から受けていて一緒に暮らせる状況ではない
・離婚する前提で離婚調停中である

協力義務

日常生活で夫婦が互いに協力すべき義務のことです。
・健康で働ける状態であるにもかかわらず働かず家事もしない
・ある程度の所得があるのに所得の少ない配偶者に生活費を渡さない
・浪費している
そういった場合は協力義務違反になる可能性があります。
ただし、協力しなかったからと言って処罰されることなどはありません。

扶養義務

相手を経済的に養う義務のことです。
夫婦はお互いに経済的な援助をおこなうことが義務づけられています。
そのため、相手が生活に困るような場面(たとえば妻が病気やケガを
して働けなくなった)では、自身と同じくらいのレベルで生活できる
ように支援する必要があります。
また、経済的に自立していない未成年の子どもがいる場合は、その子どもに対する扶養義務もあります。

例えば、妻が病気や怪我で動けなくなった場合、夫は妻に対して同程度の生活を送れるように支援したり、生活費を出すなどの面倒をみる必要があります。

おさらいしてみましょう。

「悪意の遺棄」に当てはまる行動

・生活費を配偶者に渡さない
・相手が家に帰りづらい状況をつくっている
・不倫相手の自宅に住んでいる、または半同棲状態である
・義家族と折り合いがつかず自分の実家に戻っている
・突然行方がわからなくなった
・健康なのに働かない、もしくは働く意思がない
・専業主婦(主夫)にもかかわらず家事を放棄している
・共働きなのにもかかわらず家事を一切やらない
・単身赴任を機に生活費を入れなくなった
・別居後に生活費を入れなくなった
・モラハラや暴力を受けている 
このような行動は、意図的ではなかったとしても、結果的に「悪意の遺棄」と認められることがあります。

悪意の遺棄に当てはまらない行動

・正当な理由があって生活費を渡さない
・単身赴任による別居
・正当な理由による同居拒否
・療養のための別居
・家を追い出されてしまったための別居
このように正当な理由がある場合には「悪意の遺棄」とは認められません。

「悪意の遺棄」が認められたら離婚できます。

配偶者に悪意で遺棄されたら、裁判上(法律上)の離婚原因として認められているため、離婚訴訟を起こして相手に離婚請求をすることができます。

たとえ相手が離婚を拒絶していても、相手の同意なく離婚訴訟を提起し、裁判官に離婚を認めてもらうことができるということになります。

「裁判上の離婚原因」についてはの記事も参考にされてください。

性格の不一致


「悪意の遺棄」が認められた事例

実際に浦和地裁で「悪意の遺棄」による離婚が認められたケースをご紹介します。

事例1

夫が妻に暴力をふるうなどしたため、妻が子どもと一緒に実家に戻った
(裁判所判断)
夫からも離婚請求が行われたものの、むしろ夫に「悪意の遺棄」があると判断し妻の離婚請求を認めました(浦和地裁:S59・9・19判決)

事例2

日常生活にも支障をきたす半身不随の身体障害者の妻が不自由な生活環境にあることを知りながら自宅に置き去りにし、正当な理由もないまま長期間別居を続け、その間、妻に生活費を全く送金しなかった。
(裁判所判断)
夫の行為は「悪意の遺棄」に該当すると判断
慰謝料と財産分与を合わせて、結婚中に購入した建物と土地全部を妻のものとしました(浦和地裁:S60.11.29判決)

事例3

夫が妻に出発予定や行き先を告げずに職を得るため独断で上京した結果、妻は3人の幼児を抱えて生活することになった。
(裁判所判断)
妻に何も相談しないまま夫が独断で上京した事実について「悪意の遺棄」に該当すると判断し、妻からの離婚請求を認めました。このケースでは,妻から夫に対する慰謝料請求も認めています(浦和地裁:S60.11.29判決)

「悪意の遺棄」が認められなかった事例

日本人男性と結婚したイタリア人女性が双子(生後4か月)を連れて自国に戻ったことを理由に、夫が「悪意の遺棄」による離婚と慰謝料を求めた事案では、夫婦関係の破綻は妻の態度だけを非難することができないとして、離婚は認めたものの妻の行為は「悪意の遺棄」に該当しないとされました。(東京地裁:H7・12・26判決)

「悪意の遺棄」が認められたら慰謝料請求もできる

・「悪意の遺棄」は、悪意の遺棄をした配偶者に対し慰謝料を請求することもできます。
・「悪意の遺棄」は、民法で定める不法行為にあたります。
被害者は、財産的損害以外に精神的な苦痛に対しても賠償を請求することができます。

「悪意の遺棄」で確実に慰謝料を請求するために必要な証拠とは

裁判で慰謝料を請求するためには証拠が重要です。
それぞれのケースによって証拠を集めることが必要になります。

生活費を払ってもらえないときは

・生活費の振込が途絶えたとわかる通帳の記録など

家事をしない事実があるときは

・家事や子育てをしないとわかる動画や写真
・家事や子育てをしていないことをわかっている知人や友人の証言など

同居の義務を果たしていないときは

・別居がわかる資料として住民票や賃貸借契約書など
・浮気相手の家に住んでいる場合は、配偶者(パートナー)が浮気相手の家に出入りしている写真や動画、興信所の報告書
・別居の原因や時期が特定できる日記など

少し意外に感じるかもしれませんが、自身の日記も証拠になります。
別居するに至った経緯や生活費の振り込み状況など毎日詳しく記録することをおすすめします。

日記をつけるポイントなどご紹介していますので「慰謝料請求の証拠」についてはの記事を参考にされてください。

慰謝料請求の流れ

1.協議離婚
夫婦間の話し合いで離婚を決める(協議離婚)の段階で相手に慰謝料を求めます。
相手に内容証明郵便を送り、裁判所を通さずに代理人や本人同士の話し合いで慰謝料を請求する方法です。

⒉離婚調停
協議離婚の話し合いで合意できない(相手が慰謝料支払いに応じない)場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停の手続話し合い手続きで慰謝料を請求する方法です。

3.離婚訴訟
離婚調停で調停委員の前で話し合いをしても相手が慰謝料支払いに応じない場合は、離婚訴訟を申し立て裁判官に慰謝料支払いの命令の判決を出してもらうことになります。

慰謝料請求をするときは時効に注意!

「悪意の遺棄」を理由とする慰謝料の請求には時効があります。
「悪意の遺棄」が始まったときから3年間です。
3年以上過ぎてしまうと請求不可能となりますので注意が必要です。

まとめ

今回は、「悪意の遺棄」について解説しました。
法律でも規定があるように、夫婦生活には、お互いの助け合いが基本になってきます。
忍耐と我慢が、円満な夫婦生活を送る秘訣だと思います。

しかし、さまざまな事情で「悪意の遺棄」に該当する人もいると思います。
「悪意の遺棄」は、事案によって判断されますので慰謝料の金額もそれぞれ異なってきます。

自分の場合は
・「悪意の遺棄」と認められるのか認められないのか
・慰謝料はどのくらい請求できるのか
・時効はいつになるのか
そういったことを知りたいと思う方は、ぜひYUIKAへご相談ください。

この記事の内容を【動画】でご案内しています。


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