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離婚時の子どもの親権について

更新日2020-08-27 (木) 17:17:48 公開日2020年2月4日

親権争い

未成年の子どもをもつ夫婦が離婚を考えるとき、それぞれの事情、それぞれの悩みがあると思います。

離婚したいけど子どものためになかなか決断ができないと言う人は少なくありません。
子どものために離婚をしない方が良いケースもあります。
反対に子どものために離婚した方が良いケースもあります。

ここでは離婚を決断したときの未成年の子どもの親権について考えてみましょう。

★目 次★


離婚する際、揉めごとの原因となる親権者問題

離婚する夫婦の間に子どもがいる場合、どちらが親権者になるかということが大きな問題になります。
「子供はわたしが育てます」「子どもは俺が育てる」というように揉めごとは絶えません。
親権については「自分が育てたい」という意欲だけでは獲得できないこともあります。

ここで言う子どもは未成年のことを指します。
未成年とは、何歳までと思いますか?
改正民法が可決・成立し2022年4月1日より成年年齢が20歳から18歳へと変更されます。つまり未成年は18歳未満になります。

親権とは

そもそも親権とは何でしょうか。
✿親権とは
未成年の子どもを養育監護し、その財産を管理するために、子どもの父母に与えられた権利及び義務をいいます。

親権には次の3つの権利義務があります。

親権

✿身上監護権とは、子どもの世話・しつけ・教育をする権利義務です。
詳細は次にご案内する「監護権とは」をご確認ください。

✿財産管理権とは
子ども名義の財産(預貯金等)を管理する権利義務です。

✿法定代理権とは
子どもが何らかの契約の当事者となるとき、子どもの代理として契約締結する権利義務です。

財産管理権と法定代理権には次のようなケースがあります。
・子どもが祖父母から贈与または相続を受けた場合の財産管理
この場合、子どもが成人したときに財産管理が親権者から子どもに移ります。
・15歳未満の子どもの養子縁組の代諾
・相続の承認や放棄などの代理

監護権とは

監護権とは、上記の身上監護権のことをいいます。
身上監護権は親権と分けることが可能です。親権と分けたときの呼び方が監護権となります。

監護権は民法で次の権利が定められています。

監護権

✿監護教育権とは、子どもと一緒に生活をして日常的に世話や教育を行う権利義務です。
民法820条「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」

✿居所指定権とは、子どもと暮らすことができる権利です。
民法821条「子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。」

✿懲戒権とは、必要に応じて子どもを警戒することができる権利です。
当然ですが、懲戒権があるからといって虐待その他行き過ぎた行為が許されるということではありません。
民法822条「親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。」

✿職業許可権とは、未成年の子どもの就職の許可・取消し・制限などができる権利です。
民法823条「子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。」

監護権を分けたときのメリット・デメリット

監護状態の推移・未成年の子どもに対する愛情や監護の意欲・居住環境、家庭環境・生活能力(収入等)・子どもの年齢・性別・意向などを総合して判断されることになります。

監護権は親権の一部になりますので原則は親権者にあります。
親権者と監護権者は同じであることが子どもにとっても良いことと一般的に考えられています。

しかし、先述したように、ケースによっては、親権者と監護権者が別々になることもあります。
たとえば次のようなケースです。
・親権者は元夫であるが、仕事の残業や出張が多く子どもの世話や教育が難しい
・親権者ではない元妻の方が監護権者としてふさわしい
・子どもが幼いため母親の方が監護権者としてふさわしい

監護権者をどちらにするのかについては、「自分が育てたい」という意欲だけではなく、子どもを十分に養育していけるか、子どもの成長のためにはどちらがいいのかなど子どもの利益・福祉を中心に考えることが必要です。
当事者の話し合いで決まらないときは、家庭裁判所の調停又は審判の手続を利用することになります。
調停手続を利用する場合は「子の監護者の指定調停事件」として申し立てます。
引用:裁判所(子の看護者の指定調停)

次に監護権を元夫、元妻で分けたときのメリット・デメリットを見てみましょう。

メリット

(監護者のメリット)
先述したように親権争いになると調停や裁判などで、かなりの長期戦となります。
親権が決まらない限り離婚はできません。
そんなとき、親権と監護権を分けて、相手に親権、自分が監護権とすることで調停や裁判までいかず、夫婦間の話し合いで和解し離婚が成立する可能性があります。

(親権者のメリット)
親権を持っていることで子どもとつながっている安心感が得られる。

デメリット

(監護者のデメリット)

・戸籍に監護権が反映されない。
監護権を分けた場合、戸籍謄本(全部事項証明書)に親権者は記録されますが監護権を分けたことについては記録されません。

・監護を継続できないなど、トラブルのおそれがある。
万一、離婚後相手が監護権を争ってきた場合、戸籍謄本に監護権が記載されていないため、監護権について公に証明できないという問題があります。
最悪、親権者に子供を奪われてしまう可能性もあります。

・再婚したとき再婚相手と養子縁組できないおそれがある。
離婚した後、再婚して子供を再婚相手の養子にするというケースもあります。
このとき、自分は監護権のみで親権は元夫であった場合、トラブルになることがあります。
なぜなら、子どもが15歳未満の場合、養子縁組をするためには法定代理人の承諾が必要となるためです。
親権を元夫が持っている以上、法定代理権は元夫にあります。
自分の子どもを他の男性の養子にすることに快く承諾する人は決して多いとは言えません。

(親権者のデメリット)

・面会交流ができない可能性がある

「面会交流」についてはの記事も参考にされてください。

面会交流調停


親権が決まらなければなぜ離婚できないのか!?

夫婦2人とも「離婚する!でも子どもの親権は譲らない!」と主張し合っている場合、親権の結論が出るまで離婚することは不可能です。

次は離婚届の左面を抜粋したものですが、現在の制度では未成年の子の氏名を「夫が親権を行う子」または「妻が親権を行う子」のいずれかに記入するようになっています。

離婚届

当然、父親も母親も自分の子供に愛着があるのが普通です。
愛情があるからこそ「自分が育てたい、自分が親権者になりたい」とお互い譲りあわない気持ちも当然と言えば当然です。

しかし、親権者をどちらにするのかを決定しない限り、離婚届は受理されず離婚が成立することはありません。

夫婦間で親権者が決まらない場合はどうなるのか

離婚調停

夫婦の話し合いで、親権者が決まらない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停の中で親権を決めることになります。
離婚調停とともに親権者を決める調停を申し立てることもできますし、親権者の調停だけでも可能です。

離婚の裁判起訴

裁判

子どもの親権をめぐり争いが起きて夫婦間での話し合いも、家庭裁判所での調停でも決まらないときは、最終的に裁判しかありません。
離婚調停から離婚訴訟にかけて1年~2年と長期に渡り争うことになります。
裁判離婚の場合、裁判所が離婚を認めるとき同時に親権も指定します。

調停や裁判で親権者を決めるときの重視ポイント

調停や裁判では、一般的に次のような事情が重視されます。

親側の事情

・監護能力
・精神的、経済的家庭環境
・居住、教育環境
・子どもに対する愛情の度合
・従来の監護状況
・実家の資産
・親族援助の可能性など

子ども側の事情

・年齢
・性別
・兄弟姉妹関係
・心身の発育状況
・従来の環境への適応状況
・環境の変化への適応性
・子の意向
・父母及び親族との結び付きなど

裁判所の見解

①母親優先の原則

母親優先の原則は、言葉の通り子どもの年齢が幼ければ幼いほど母親が面倒を見た方が良いというものです。
年齢の違いによって母親に対する依存度は変わってきます。
幼ければ幼いほど母親に対する依存度は高くなります。
このことにより、裁判所としては子どもが幼いほど母親に親権を持たせた方が良いとという考えが働く可能性があると言えます。

②現状維持の原則

現時点での家庭環境維持の原則です。
子どものこれまでの生活環境が変わらないかどうかが重視されます
たとえば、夫または妻が相手に黙って子どもを連れて自分の実家に戻ってしまった場合、子どもが実家で生活する期間が長ければ長いほどその生活環境に慣れています。
その環境で保育園や学校に通っている現状があれば、裁判所としては「せっかく慣れてきた子どもの生活環境をむやみに変更させるのはあんまり良くない」という考えが働く可能性があるためです。

仮に妻が子どもを連れて実家に帰ったときは、夫にとっては非常に酷な話ですが、圧倒的に妻が有利だと思います。
ただし、妻の子供への暴力や育児放棄があれば話は別です。
また、子どもの年齢が成人に近ければ近いほど例外は出てきます。

その他の見解として、次のような具体的な事実が判断材料となります。
・育児により多く関わってきたのは?
・食事を作って食べさせていたのは?
・保育園の送り迎えを担当していたのは?

また、子どもの年齢がある程度高く判断能力や自分の意思を伝えることができる場合は、子どもの意思を尊重することもあります。

子ども

親権者をあとで変更することは可能なのか

親権者を決めて離婚をした後に事情が変わり、親権者をもと妻からもと夫へ、もしくはもと夫からもと妻に変更できるのかということについて解説します。

例えば親権者となったもと妻が別のパートナーと結婚したきっかけで、その親権を持っている自分の子どもの養育を全くしなくなったり、育児放棄をしたり、暴力を振るったというようなことがあれば、親権者はもと妻ですが、もと妻ともと夫の間で合意をすれば親権者を変更することができます。

そのような事実があるにもかかわらず、もと妻が親権者変更を認めない場合、もと夫は家庭裁判所に親権者変更の申し立てをすることができますが、このとき、もと夫は、もと妻が「子供に暴力を振るっている」「育児放棄をしている」「まったく面倒を見ていない」という証拠をしっかり揃えて調停の申し立てをする必要があります。

ただし、親権者の変更は、母親優先の原則・現状維持の原則の2つがありますので、簡単ではないと思ってください。
ただ漠然と「自分が親権者になりたい」という理由だけでは、難しい現状があります。これは子供が幼ければ幼いほどその傾向が強くなります。
そのためにも証拠が必要です。

父と子

子どもがもと妻のところにいる場合、怖い目にあっていないか、寂しい思いをしていないかを確認するため、そして父親として子どもとコミュニケーションをとるためにも子供に会える権利「面会交流」がありますので、月1~2回だけでも子どもに会って成長を見守っていくのも良いかと思います。

この記事の内容を【動画】でご案内しています。


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